世界は「EVブーム」から一転して「EV墓場」へ

電気自動車(EV)への転換に積極的だった欧米、中国の自動車大手に、戦略転換の動きが広がっている。急激なEV需要の鈍化を受けてのもので、独メルセデス・ベンツは2030年までに新車販売をすべてEVとする計画をあっさり撤回した。米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーターもEV投資の延期を決めた。1月には仏ルノーがEV新会社「アンペア」の新規株式公開(IPO)を中止。米ブルームバーグ通信は2月27日、米アップルがEVの開発を打ち切ると報じた。

変わって売れているのはハイブリッド車だという。鳴り物入りでEVブームに突入した当初から、トヨタ自動車の豊田章男会長は「EVの市場シェアは最大でも3割、残りはハイブリッド車など」という未来予測をしていた。世界のメーカーが全面的にガソリン車の製造をやめる中でEVは最小にとどめ、ガソリン車とハイブリッド車に傾注してきた先見の明が光るようになった。

ブログ子はそれほどクルマに詳しいわけではないが、ブームの当初からEV車にはまゆツバだった。理由は寒冷地での経験からだ。このブログのタイトル「Mt・8 Blog」にある通り私は年のうち半分ほど八ケ岳で暮らしている。最初にひどい目にあったのはスキーをするべく山墅に入った2月だ。この時は4駆のディーゼル車だったが、朝エンジンがかからない。業者を呼んだら「軽油はマイナス10℃くらいで凍ります。来るとき3号軽油というのに全量入れ変えなければ」と教えられた。

米・イリノイ州のテスラの充電施設で極寒のため充電できず放置された「EVの墓場」

次はバッテリーが朝方動かなくなった。札幌で4年間過ごしたので、下宿の親父さんが夜バッテリーを外して部屋の中に取り込み毛布を掛けて保温したのを朝方に取り付けていたのを見ていたので、バッテリーが極寒に弱いということは知っていたのだが、それから20数年経っていたのに大して進歩していないことに驚いたものだ。

さらに20年ほど経った昨年末でもバッテリーが極寒に弱いということが改善されていないことが明白になった。世界一のEVメーカーとなったBYDを擁し、昨年1年間に輸出した自動車の総台数でも、日本を抜いて世界1位の中国。12月中旬、東北部から内モンゴル、中国最西端に位置するウイグル自治区を襲った寒波は最低気温が氷点下40度以下になった。

一般的に中国の電気自動車は1回の充電で400~500㎞の走行が可能とされているが、中国東北部の寒冷地では性能が落ち、暖房を節約しても半分の200~250㎞しか走れず、スピードを出すとさらに航続距離は短くなる。しかも、酷寒のために電気駆動システムが作動しないトラブルも多発した。例えば、スマートフォンや指紋認証で始動させるスマートキーが作動せず、そのため路上に放置された車が目立ったという。その結果、SNSには「EVの夢に騙された。次に購入するのはガソリン車だ」と訴える投稿が拡散したという。

BYDが中国で売り上げが伸びたのは巨額の補助金と減免税制度。上からの強制割り当てという裏のカラクリからである。日本でも売っているが、BYDが日本で販売したEVは23年1月が20台、2月が37台…1~11月の累計販売台数はたったの1237台である。

ノルウェーは世界でもっともEVが普及している国の一つで、22年の乗用車新車販売で、約8割をEVが占めた。EV大国でいま問題になっているのが、充電の困難さだ。ノルウェーはEVの公共充電器を国策で次々につくり、22年には約2.4万カ所になった。しかし、それでも設備が足りず、街中の充電器には長蛇の列ができている。

EVの充電は時間がかかる。技術的には急速充電も可能だが、バッテリーの寿命が短くなるので忌避されており、結局は長い時間をかけて普通充電するのだ。また寒い地域ではヒーターをよく使うため、電気の使用量も多い。ただでさえ手間がかかるのに、充電してもすぐにまた充電が必要になるという使い勝手の悪さでは、ユーザーからネガティブな意見が相次ぐのも納得だ。

そしてEVは、もっと根本的な問題も抱えている。そもそもCO2の削減にどれだけ役立つのかが疑問なのだ

EV信者は環境にやさしいと喧伝してきた。これもまやかしである。なるほどEVそのものは電気で走るため、CO2を排出しない。ところが、皮肉なことに世界の電力の6割以上は石油や石炭などの化石燃料からつくられている。一見クリーンに見えるEVも発電方法はクリーンではなく、イメージほど地球環境にやさしくないのだ。

CO2排出量を減らすのに、EVに乗れと政府や業界が音頭を取るのはインチキである。トヨタのハイブリッド車SUVは、40リットル給油すれば1000キロ走ることができる。エンジンと電気モーターを内蔵するHVは、従来のガソリン車と比較して走行距離あたりの燃料消費量が格段に少ない。

さらに言うなら山墅は標高1760」㍍にある。東京の自宅は標高33メートルだ。毎回1700メートルも登攀していることになる。EV車は平地走行はまだしも登坂力ではガソリン車に及ばないのも明白である。

アメリカのマーケット調査会社の24年の自動車消費者調査では、次に購入を希望する車はエンジン車が大半で、EVへの関心は弱い。米国では純内燃エンジン車(ガソリン・ディーゼル)が67%、HVが16%、EVが6%。ドイツは純内燃エンジンが49%、HVが10%、PHVが11%、EVが13%。中国は純内燃エンジンとEVがともに33%で並んだが、HVの18%、PHVの13%を含めたエンジン車合計は6割を超える。

こうしてEV車の欠点を羅列してみるとブログ子ならずともハイブリッド車に世界が食指を動かすのは無理かなぬことだと思えるのである。「EVへの流れに乗り遅れた日本」と書きまくってきた自動車評論家の弁明を聞かせてもらいたいものだ。

コメントは受け付けていません。