武器輸出に反対する「女の理屈」は通らない

政府は3月26日の閣議と持ち回りの国家安全保障会議(NSC)9大臣会合で、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機(GCAP)に限り、国際共同開発・生産品の第三国輸出を解禁する政府方針と防衛装備移転三原則の運用指針改正を決定した。従来の運用指針は共同開発する完成品の第三国輸出を認めておらず、武器輸出政策の大きな転換となる。

日英伊による次期戦闘機のイメージ

これに対し毎度のことながらリベラル左翼からは反対の声が挙げている。いわく

国内メーカーで防衛産業を強化する動きが相次ぐ中、消費者団体の日本消費者連盟(日消連)と主婦連合会(主婦連)、市民団体の武器取引反対ネットワーク(NAJAT)は21日、東京都内で会見を開き、次期戦闘機の共同開発に参加している三菱重工業と三菱電機の製品の不買運動などを呼びかけた。

日消連の纐纈美千世事務局長は会見で「人の命を奪う武器をつくろうとする動きは、全力で止めなきゃいけない」と訴えた。3団体はこの日、次期戦闘機の共同開発や武器輸出の中止を求める要請書を両社に提出した。両社に「死の商人にならないで」と訴えるはがきを送る運動も始めている。はがきの印刷用データは日消連などのホームページからダウンロードできる。(東京新聞・望月衣塑子)

立憲民主党の辻元清美は、「日本は人を殺す武器も売る国にしたいということですね」と岸田首相に詰め寄った。

共産党もおなじみの 「生命(いのち)を生みだす母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」のスローガンを押し立てて武器輸出に反対している。

お経のように「平和」を唱えているこれらの人の能天気ぶりには辟易するばかりだ。ロシアによるウクライナ侵攻を見よ、パレスチナのハマスとイスラエルの戦闘を見よ、中国がチベットやウイグル、東シナ海や台湾で繰り広げている覇権主義の暴挙を見よ、北朝鮮のロケットマンの狂気を見よ…世界は暴力で満ち溢れている。平和でありたければ、それはお経ではなく「力」であることがわからないのか。

武器輸出に箍(たが)がかかったのは朝鮮戦争の時からだ。日本は武器弾薬を輸出して国連軍に貢献した。しかしながら1967年、佐藤栄作首相が共産圏・紛争当事国などへの武器輸出禁止を決め、76年には三木武夫首相が「武器輸出を慎む」と答弁して武器輸出の全面禁止が定着した。

2014年、「防衛装備移転三原則」が閣議決定され厳格な審査を条件に武器輸出が認められた。紛争当事国へや国連安保理決議に違反する場合、輸出はできない。平和貢献・国際協力や日本の安全保障に資する場合などは認められる。現在、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型のみ認める指針で運用されている。

なぜこの「5類型」だけでいけないのか。岸田首相は参議院予算委員会で、第三国への輸出解禁が必要な理由をこう訴えた。

「日本が求める性能を実現するうえで「(第三国輸出が可能な)英伊と同等に貢献しうる立場を確保することが日本の国益だ」、次期戦闘機以外でも国際共同開発の枠組みに加われなくなれば「装備品の取得・維持が困難となり日本の防衛に支障をきたすことになる」、第三国輸出を解禁しなければ「価格低減の努力をしないことになり、日本が優先する性能を実現するために英伊が自ら求める性能を断念することは想定されない」等と述べた。妥当な立場である。

 家電製品はじめ民用品は費用対効果の経済原則で成り立っているが、武器はそうではない。戦闘機、火器、戦車、潜水艦、イージス艦…どれをとっても量産がきかないものばかりである。一つ何億、何十億単位で採算は度外視されているから少しでも輸出しなければやっていけない。

現在、国家の安全保障を単独で確保することは無理であり、民主主義国との間の同盟が費用対効果上、軍事上、政治上最も合理的である。この傾向は益々強まる。一国では安全を確保できないし、日本のような大きい国が一国でそれを追求することは、実現可能性の問題の他、国際政治上も不安定化要因になる。かくて、民主主義国等第三国への輸出は解禁することが重要になるのだ。

防衛産業は実は車両、艦船、航空機、情報機器から、弾火薬、被服、燃料といった多種多様な産業分野を含む複合産業という一面を持っている。しかも、その市場規模は家庭用電気機器市場よりも大きい。

防衛省は、日本の製造業の市場規模を次のように例示している。

▽自動車産業56兆円▽電子工業11・4兆円▽防衛関連調達3・9兆円▽家庭用電気機器2・5兆円▽宇宙航空産業1・7兆円▽造船業1・4兆円。

自動車産業が突出しているのは当然だが、防衛産業の市場規模が宇宙航空産業や造船業よりも大きい。なぜそれほど大きいのか。それは防衛産業が膨大なサプライチェーンを持っているからだ。防衛省は以下のような実例をあげている。

▼F―2戦闘機→約1100社(17年、日本航空宇宙工業会調べ)

▼護衛艦(DD)→約8300社(13年、日本造船工業会調べ)

▼10式戦車→約1300社(16年、防衛装備庁調べ)

つまり膨大なサプライチェーンがあってこそ、日本は戦闘機や護衛艦などを作ることができているわけだ。もし、そのサプライチェーンに中国企業などが入っていたら、いざというとき調達できなくなってしまう恐れがある。そうしたリスクを回避するためにも、国内の防衛産業に対する発注額を増やして一定の市場規模を維持する必要があるし、それは結果的に国内経済にも資するのだ。

22年12月、岸田政権は5年間で43兆円へと防衛費を倍増した際、左翼陣営から「どうせ米国の武器を買わされるだけだ」みたいなデマが飛び交ったが、実は防衛関係費の約8~9割は国内向け支出なのである。

話を問題の、日英伊による次期戦闘機がなぜ必要かに戻す。イギリスとイタリアは、輸出することで生産を増やし、低コストにすることを求めていた。断われば、日本は専守防衛に必要な次期戦闘機が開発できなくなる状況だった。

元航空幕僚長の田母神俊雄氏は「今、航空自衛隊はF-35をアメリカから輸入で調達している。アメリカがまず戦闘機の開発をするが、数年経って能力が向上したときに、一番古いソフトウェアを搭載したF-35を日本に渡すことになっている。つまり、同じF-35でも日本はアメリカに勝てない状況でしか輸出されない。これはどの国も皆そうで、武器輸出の原則だ」

田母神氏は、さらに「他の国が皆輸出している中で、日本だけ輸出しないのは平和国家として自らの手足を縛っている。軍事力強化に対して“戦争をするのか”と言われるが、世界平和を維持しているのは軍事力だ。強い軍事力を備えて、最後まで戦い抜く体制でいることが、相手の侵略を抑止することになる。そして、日本で作った武器を他国に使わせることは、その国に対する外交交渉で強い立場になれる。“言うことを聞かなければ戦闘機を動かせなくする”という無言の圧力が常時かけられる」という。


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