メディアまで目をそむけてはならない

アメリカの新聞の電子版を見ていたら今年のピュリツァー賞の受賞者が出ていた。メーンの公益部門では米国家安全保障局(NSA)の情報収集活動の実態を伝えた米紙ワシントン・ポストと英紙ガーディアンが選ばれたのだが、特集写真部門はボストン・マラソン爆弾テロの被害者を撮影したニューヨーク・タイムズのジョシュ・ヘイナー氏の作品が選ばれた。その写真を見て衝撃を受けた。
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死者4人、重軽傷者260人以上を出した昨年のボストン・マラソンを狙ったテロで両足を失った20代のランナーがリハビリする姿や義足をつけてガールフレンドに支えられて社会復帰するまでの10枚の写真で受賞したのだが、その一枚は男性が病院のベッドに仰向けで両手をひろげている。事件から1か月後にリハビリに励んでいるシーンだという。

日本の新聞では一紙として掲載したところはなかった。メディアの中にいたからわかるが、残酷だという理由だ。受賞発表がちょうど事件から1周年という時だったので、ボストンで開かれた式典で旗を持ち行進する警察や消防のパレード、遺族らが現場の路上に花輪をささげる姿をもっぱら紹介していた。参加したバイデン米副大統領は「私たちはテロに屈服することを拒否する。恐怖のため譲歩すること、何かを変えることを拒否する」と訴えたという。

この一枚の写真はテロへの戦いを何より象徴している。事実アメリカでは何紙かが掲載していた。それによるとこの青年はバウマンさんといい、この夏には、子どもが生まれるという。そういうことを知ってもう一度写真を見ると、彼の不屈の精神に感動するのだが、日本のメディアはこの写真を「自主的判断」で葬った。

imagesこの記事のそばにあったニュースだが、爆弾から5メートルの場所で被害に遭いアキレス腱が吹き飛ぶ重傷を負ったピーター・ディマルティーノさんの結婚話が紹介されていた。当時ピーターさんの隣にいて同じく重傷を負ったレベッカ・グレゴリーさんと一周年を前に結婚式を挙げたが、彼女は6月に左足を切断する予定だという。「私たちは幸せです。この1年でひどいことや恐怖も味わいましたが、私たちの関係はとても強くなりました」(レベッカ・グレゴリーさん)というコメントもついていた。

むごたらしいシーン、個人情報に関わる写真、ウクライナのFEMENという、乳房を露わに反プーチンなどのボディーペインティングを書いて走り回る女性の写真では「18禁」のガードが掛けられるなど、報道機関による自主規制が年ごとにひどくなる。配慮が必要なものがあるのは当然だが、こう機械的に一般の目から遮断するのは報道の自滅を意味する。

ブログ子は写真に一瞬は躊躇したが、裏側のストーリーを読んで感動し、「私たちはテロに屈服することを拒否する」という彼らの高らかなメッセージを読み取った。

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