いつも思うことだが韓国人の激する姿にはただ驚かされるばかりである。
旅客船「セウォル号」(6825トン)沈没事故で、朴槿恵大統領が17日、行方不明者の家族が集まる珍島の体育館を訪れたというので、日本の天皇皇后両陛下が被災地を訪れられるときのように、「つらい思いをさせましたね」という慰めの声に、自分を抑えた声で謝意を述べる静謐な光景を想像した。
しかし韓国ではまるで違った。政府の捜索活動が遅れていると不満を持つ家族が大統領に「こんなところにいないで早く対策でも立てろ 」などと罵声を浴びせ詰め寄った。朴氏が説明しようとする間も家族らは大声で不満を延べ大統領は困惑の表情で立ち往生したという。
同じく体育館を訪れた鄭烘原(チョン・ホンウォン)首相はSPともども水をぶっかけられた。
この首相は1月、日本の野田前首相が「韓国トップが米欧に行っては、女学生のような『言いつけ外交』で日本を批判している」と述べたのに「政界の主要人物が大韓民国の国家元首に対して無礼極まりない発言をしており、忍耐の限界を感じる」と強く批判した人物だが、「無礼極まる行為」を前にそそくさと逃げ出している。
驚いたのは朴槿恵大統領の反応だ。家族が捜索状況を知らされていないと不満を述べると「真っ先にご家族に知らせなければならないでしょう」とそばにいる担当閣僚を叱責し「最後の1人まで助けるよう最善を尽くす」と約束して会場を立ち去った。およそ一国のトップが取る態度ではない。自分は女帝気取りで、責任は皆部下に押しつけるような人物が人心掌握できるとは思えない。
家族の怒りの向け先も日本とは異質だ。修学旅行を実施した高校の校長が謝まっていると生徒の父兄がこれまた何か叫びながら水をぶっかけているテレビを見た。高校もいわば被害者なのだが、こうなるともう見境がつかない怒りの向け方である。校長も校長で教員を壇上に並べて土下座していた。
この海難事故を前に日本の海上保安庁は事故翌日に韓国の海洋警察庁に救助活動の支援を打診したところ、韓国側は辞退した。防衛省も掃海母艦などの艦艇4隻やダイバーらを佐世保基地(長崎県)や呉基地(広島県)などに待機させていて「要請があった場合には速やかに対応したい」としているが、反応はない。
韓国の海洋警察庁は日本の海上保安庁を模して作られた。ここには特殊救難隊「海猿」がいる。掃海母艦は今回沈んだ船より大型で潜水、救難、救護、搬送(ヘリ)に対応できるすぐれものだ。テレビを見ると一人ずつかごに入れてヘリに釣り上げているし、船内捜索も相当遅い。メンツを捨てて要請してくれたらきっと役立つと思うのだが。
船長は、入社4か月の20代の女性3等航海士に操舵をまかせ休息していて、事故後、機関士や操舵手ら乗員6人とともに最初に救助された。北大西洋で沈んだ「タイタニック号」の船長も、太平洋戦争中沈められた日本の多くの艦長も船とともに運命を共にした。それほどの責任感を持った職責だと思っていたのを一変させたのは2年前、イタリア中部沖合で32人が死亡・行方不明になった大型客船「コスタ・コンコルディア号」の座礁事故だ。乗員乗客を置き去りにして船外に脱出し、沿岸警備隊の「船に戻れ」との指示にも従わなかった。
モラルが以前と一変しているのである。個人も国家も。韓国の理不尽な反日も国内事情からと理解しているが、一つの船舶事故から、こういう国柄と人柄に起因していることを知るのである