SNSごときに振り回されてどうする

24日の名古屋市長選では、河村たかし前市長から後継候補に指名された広沢一郎氏(60)が当選した。自民、立憲民主、国民民主、公明の与野党4党が推薦し、加えて大村秀章愛知県知事まで応援これつとめた元参院議員、大塚耕平(65を)を圧倒的票差で下した。

民社党時代の春日一幸に始まり、その秘書だった河村たかしと、連綿と続く名古屋人挙げての「愛されキャラクター」「選挙モンスター」の謂(い)われはこのブログで書いたが、その通りの結果だった。

それでも、当選した広沢一郎は、「SNSの力が大きかった」という。知名度不足を補うためユーチューバーによる動画配信に河村氏とも共演し(写真右)「減税を拡大させる。消費に回れば経済が活発になる」と訴え続けた。「ネット越しで何千、何万の方にご覧いただいた。日に日に再生回数が増えた」とネットの力を述懐した。

ブログ子も驚いたが、11月17日投開票の兵庫県知事選では、不祥事で失職したはずの斎藤元彦前知事が予想を覆して再選を果たした。これもSNSの力が大きかったと一部の人たちは分析している。

曰くーー
・YouTubeで530万人超の登録者数を誇るオリエンタルラジオ・中田敦彦氏が斎藤氏について取り上げたパワハラなどへの疑問を取り上げた動画の再生数は200万回を超え、選挙戦にも大きな影響を与えた。

・投票直前の11月14日、兵庫県内29市のうち22市の市長が、稲村氏への支持を表明した。SNSで情報を入手している人たちは少なからず、「既得権益層が斎藤氏の改革を妨害している」と受け取ったようで、この表明は裏目に出た。

・政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が出馬しつつ、斎藤氏へ援護射撃を行った。立花氏は街頭演説を行うのみならず、YouTubeやXで斎藤氏の疑惑を否定したり、百条委の県議を批判したりした。

こうしたSNSがいわば独り行脚を続けるうちに「パワハラやおねだり疑惑は、県庁守旧派が改革派の知事を潰すために捏造した」といった根拠不明の風説が、SNSを通じて拡散され、流れが変わり始めた。斎藤本人も街頭演説で「メディアの報道は本当に正しかったのか」と語り掛け、聴衆から「そうだ!」の掛け声がかかるようになった。「メディアに攻撃されてもたった一人で旧態依然たる県庁組織や既成政党に立ち向かう男」という「物語」がつくり上げられて大きな流れになった。

日本では今年7月の東京都知事選で石丸伸二候補がSNSを駆使して善戦したことで、選挙におけるSNSの重要性がにわかにクローズアップされた。アメリカの大統領選ではSNSでトランプ支持者が「MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)」と叫びまわって大差で民主党を下した。このところ東西を問わずSNSが政治の必須アイテムとされる報道が怒涛の如く押し寄せている。

はたしてそうか。斎藤元彦前知事が「逆境」を跳ね返して県庁に戻ってきたというので、これまで批判してきたテレビのコメンテーター、前明石市長の泉房穂や元宮崎県知事の東国原英夫が手のひら返しで謝罪しているが、これなど滑稽な寸劇でしかない。

斎藤知事の暴挙を最初に県の公益通報窓口に通告した県西播磨県民局長だった男性(60)に対し、調査結果を待たずに翌月に懲戒処分とした件では、知事は人事課に「処分できるか」と持ち掛けている。為に男性は7月に自殺している。人が一人死んでいるのだ。疑惑は残ったまま「見事な返り咲き」で済ませられることではなかろう。

よくしたもので、SNSに助けられた人は今SNSに足をすくわれつつある。県知事選に際し、広報やSNS戦略を任されたとするPR会社の女社長が、トクトクと自慢話をインターネット投稿プラットフォーム『note』に投稿したのだ。

「私が発案した『#さいとう元知事がんばれ』というハッシュタグが広まり、多くの人がそのハッシュタグを拡散した。SNSなどのデジタルツール活用の戦略が当たった」と自慢話や県庁での会議にPR会社として出席していたこと、その戦略の描いた図面などもSNSに投稿し、知事とのツーショット(写真右)も公開した。会社として請け負ったなら公職選挙法違反を自白したも同然。今後、司直の手が及ぶのは必至だ。

なにかともてはやされるSNSだが、ブログ子は、ツイッター(現在X)だろうが、TikTok(ティックトック)だろうが、インスタグラムだろうが、ハナから相手にしていない。たかだか2,3行でどれだけの情報が発信できるというのか。LINEは使うがこれは孫たちが写真を送ってきたり「誕生日おめでとう」などとの他愛ないメッセージに返信するためだ。

新聞記者生活が長かったから、まともな情報を発信するには2,3行ではまともな情報など伝えられないことを知っている。ジャーナリストを名乗る人は多いが、なら、取材してウラをとって自分の手で原稿を書くものだ。コピーして、SNSに「いいね」ボタンをピッと押すだけでいっぱしの情報を発信しているつもりの人種など外道もいいとこだ。gあ、
アメリカの大統領選、兵庫のパワハラ知事、名古屋の市長選・・・流れたというSNSの内容を読んでみると、誤報、虚報、意図的な誘導のオンパレードである。

まともな人はこんなものに惑わされてはならない。

今朝の産経の外電に「いいね」をポチッと押したくなるニュースがあった。

オーストラリアのアルバニージー政権は16歳未満の交流サイト(SNS)の利用を禁止する法案を議会に提出した。年内に可決される見通し。暴力や自殺、いじめなど「有害な投稿」から子供を守るのが目的で、運営企業にアカウント作成の際の厳格な年齢確認を義務付けている。16歳未満による接続を防ぐための「合理的な措置」を取らなかった場合、最大4950万豪ドル(約50億円)の制裁金を科す。

日本もさらに広げて、虚偽を広めたSNS投稿者には厳罰を科してもらいたい。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です