サッポロビールは低価格の「第3のビール」として昨年6月から販売していた「極ZERO(ゴクゼロ)」について、国税庁から「第3のビールではない可能性がある」と指摘を受けたため、5月の製造分で販売を中止、製法を一部見直した上で、「第3のビール」より価格が高い「発泡酒」として7月15日に再発売する。酒税税率の適用区分の変更で最大約116億円の追加納付の可能性がある
上の表をみればわかるがビールの出荷量は年々減少している。こうなったのは世界でも例を見ないほど高い日本の酒税にある。ビール系飲料は原料の麦芽比率などによって酒税が異なり、麦芽比率3分の2以上のビールは350ミリリットル缶で税額77円▽発泡酒は47円(麦芽比率25%未満の場合)▽発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜた「極ZERO」など第3のビールは28円。
あまりにも酒税が高いから、メーカーは知恵を絞って酒税がより安い製法の研究に励んできた。ビールと似たような味わいを保ちつつ、製法や原料を工夫して酒税を低く抑えたアルコール飲料の開発に精を出す。麦芽を使わず、トウモロコシなどを発酵させる製法もある。この結果、発泡酒や第三のビールが出現したのだが、そのたびに国税当局が「それは酒税法違反だ」とちゃちゃをいれて課税してきた。
ドイツミュンヘンで毎年開催されるビールの祭典「オクトーバーフェスト」に行った事がある人は誰しも思うことだろうが、ほんとに美味しいビールが色とりどり出回って実に楽しい。まあ、ビール腹の心配があるにせよだ。ところが日本だけいまや「ビールとは言えないビール」ばかり飲んでいて、年々ビールの出荷量は減少の一途をたどっている。おかしくはないか。
戦後から今に至るも税収の中で酒税は大きな地位を占めてきた。だが酒税の掛け方ときたら愚行の連続である。例えば日本酒である。国税局に申告するときはすべての日本酒は「2級酒」で、あとはメーカーが税率の高い順に酒税を納めれば「特級」「1級」のラベルを貼る。これではどこのメーカーも美味しい日本酒をつくる努力などしない。
毎年秋も深まったころ、東京はじめ全国の国税局でその年の「日本酒品評会」が開かれる。ここには店頭に並ぶものとは違う酒蔵が丹精込めてつくって国税に提出した「本当の日本酒」が並ぶので、ブログ子など楽しみにしていて毎年出席していたものだが、どうやらこれは懇親に名を借りたマスコミ対策のショーだったようで、幹部は的確に「この日本酒がおいしい」と教えてくれていた。本当の日本酒の旨さは国税局の役人が一番知っていたわけだ。
ようやく改められて現在、精米歩合により
•「純米酒」-精米歩合70%以下で、香味や色択が良好のもの
•「純米吟醸酒」-精米歩合60%以下で、固有の香味を帯び、色沢が良好なもの
•「純米大吟醸酒」-精米歩合50%以下で、固有の香味を帯び、色沢が良好なもの
また特別な製法である事を表記した「特別純米酒」などが登場するようになった。
ブログ子は日本酒が好きで中でも新潟・村上市の「十四代」に目がない。「十四代」にもいろいろあって講釈すればきりがないのでやめるが、やっと馬鹿な酒税が改められて各蔵元が好きなように日本酒づくりができるようになったおかげである。だから現在が一番日本酒が美味しい時代だと思う。だが”くさい””カラッとしない”というので「日本酒離れ」の時代となり、これまた年々醸造量は減るばかりである。ブログ子は先の消費税が上がった4月に同時に酒税を引き下げる話が出ても良かったと思う。そのほうが消費量が上がって酒税収入が上がったと思う。しかるに業界からも国会からもメディアからも一言も出なかった。
安易に酒税に頼りすぎているかぎり日本酒やビールの出荷量は減り続ける。「まがい物のビール」ばかりでいいのか。どう見ても酒税改革が遅すぎる。国税庁の怠慢だ。