カトリック教会のフランシスコ法王(77)は21日、犯罪組織「ンドランゲタ(Ndrangheta)」が拠点とするイタリア南部カラブリア州を訪問し、マフィアのメンバーは全員「破門する」と宣言して組織犯罪を厳しく批判した。
フランシスコ法王は信者らを前に、マフィアは「悪魔を崇拝し、公益をさげすむ者たちだ。このような悪は叩きのめし、追放せねばならない」と糾弾。「マフィアのように悪の道を歩む者たちは、神に属すことはない。彼らは破門される」と述べた。カトリックでは、破門された人間は、死後に地獄で責め苦にあうと考えられている。カラブリア州では1月、3歳の男児がマフィアの報復に巻き込まれて殺害される事件が起きている。この男児「ココ」ちゃんは、祖父が麻薬の代金を支払えなかったことを理由に、祖父とそのパートナーのモロッコ人女性と共にンドランゲタに頭部を撃たれて殺害された。ココちゃんの遺体は焼け焦げた車の中から縛られた状態で見つかり、イタリア全土に衝撃を与えた。
?バチカン広報当局によると、フランシスコ法王はココちゃんの父親と祖母に会い、慰めの言葉をかけるとともに「このような形で子供が犠牲になることが2度とあってはならない」と語ったという。
門外漢ながら、法王のマフィア破門宣言は効くのではないか。映画「ゴッドファーザー」程度の知識しかないが、掟のためには殺人をも辞さないマフィアが同時に熱心なカトリック信者であるという現実はなかなか理解し難いものだが、イタリア全土に浸透しているバチカンに対する深い信仰の一端は垣間見たことがある。
現在の法王ではなく2代ほど前の法王の時代バチカンを訪ねた。上智大学の文学部長などを務めたピタウ神父が当時バチカンでかなりの実力者になっていて、ワインセラーがついた修道院を誰か日本人実業家で買う人はいないかというような話が出た。同時に、毎週水曜日に法王が10人ほどの人に面会する慣例になっていて、この人選を任されているのがイタリアで旅行業などを営む日本人女性ということで、彼女がその中にあなたを入れてあげるということだった。
たくさんの信者をさておいて曲がりなりにも仏教徒という異教のそれがしが罷り出でるのは申し訳ないと、断ったが、翌週だったか作家の曽野綾子がその中に入っていた。
不動産売買の一件は沙汰止みになったが、その修道院は昔に信者が寄進したもので、何世代か待てばまたバチカンに返ってくるようなことを言われて、息の長いバチカン商売に驚いた。コンクラーベ(法王選出の枢機卿会議)の写真などを見ると感極まって泣いている人も見かける。
シシリー島のマフィアは敬虔だったが(映画では)「ンドランゲタ」が活動するカラブリア地方の宗教心がどの程度のものか知らないが、法王に破門されたら地獄に行くというのではさぞかし効くのではないか、と考えたのだが、別の外電を見たら衝撃的なことが報じられていた。
法王は、マフィアによるマネーロンダリング(資金洗浄)のうわさが絶えなかった宗教事業協会(通称・バチカン銀行)の透明性の向上に取り組んでいる。バチカンとカトリック教会に張り巡らしたマフィアの利権ネットワークを法王が破壊しようとしていることから、マフィア摘発にあたるイタリアの検事は、マフィアが法王の暗殺を企てる可能性に言及している。