小笠原、伊豆諸島周辺海域に現れた大量の赤珊瑚密漁の中国漁船団。台風を避けて一時南下したが、再び現れて日本側警備陣を翻弄している。菅義偉官房長官は「外交ルートを通じて注意喚起を行い、中国側に遺憾の意を表明し、再発防止を求めている」というが、中国政府の反応は「我が国は法に基づいた操業を求め、規定違反の赤サンゴの採取を禁じている」と述べたり、「日本と協力して解決を望む」(5日夜のニュース)という木で鼻くくったものばかり。来週10,11日中国で開かれるAPECで日米首脳会談が実現するが尖閣、靖国参拝などはみな触れずというのだから、珊瑚の密漁など推して知るべし。
日本のメディアは中国での赤珊瑚の価格高騰をことさら紹介して、為に漁船団が来襲したような書き方をしているが、甘い。「日本の領土領海への揺さぶり」と見るべきだろう。軍事的に見ると、今は尖閣諸島中心に展開している海上保安庁の巡視船などを小笠原諸島にも向けさせ分断をはかること。そして第2列島線突破のための『海上民兵』の下訓練である。
第一列島線は、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインで、中国海軍および中国空軍の作戦区域であり対米国防ラインだ。第二列島線は、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るラインである。従来は中国の海洋調査などは第一列島線に限られていたが、このところは第二列島線付近にも進出している。その一環として赤珊瑚密漁の中国漁船団を仕立ててきたと見るべきだ。
いくら赤珊瑚の価格が高騰したと言っても、自然発生的に中国の漁師が200隻以上の船を仕立ててやってくるものか。しかも高性能レーダーを備えて一糸乱れず船団行動を取っていることをみてもわかる。領土や領海をめぐり、大量の偽装漁船を使って対象国に揺さぶりをかける手口は、中国の常套手段である。遠洋航海する漁船はすべて中国当局の管理下にある。大船団の中には軍事訓練を受けた海上民兵が紛れ込んでいるものなのである。
海上民兵とみられる証拠写真がある。10月4日の朝日新聞に船を仕立てて近づいた記者のルポが掲載されている。その中に「父島沖、接近した記者に笑顔で手を振るサンゴ密漁船の船員」という一枚がある。漁師がこんなに白い肌をしているものか。左側の男など真っ白である。しかも筋骨隆々である。中国側は「もぐり専門」の漁師とでも言うのかもしれないが、実に不自然である。
中国では漁船に戦闘訓練を積んだ海上民兵を紛れ込ませるのが常だ。韓国で押し寄せた漁船を取り締まろうとしたら船団を一列に並べられて突進され、棍棒で激しく抵抗されて太刀打ち出来なかったケースがある。あれと同じである。「海猿」がいくら優秀だと言っても戦闘訓練までは受けていない。海上自衛隊での取り締まりも視野にいれるべき大事なのである。