みちのくの冷えのこもりし林檎着く

みちのくの冷えのこもりし林檎着く

みちのくの冷えのこもりし林檎着く


毎年今頃になると山形県米沢市の母の実家からリンゴが届く。今年も届いた。そして表題の一句を家内ともどもしみじみと口にする。俳句に親しんだ母は橋本多佳子が主宰する「七曜」の同人で、山口誓子の門下生でもあったが22年前の11月に79歳で亡くなった。当時のリンゴの送り主は祖母だったが、今ではそれから下って3代目が送り主となった。とうに途絶えてもいい歳月だが、忘れず届けてもらっている。

当時は籾殻入りの木箱で到着したものだが、今ではダンボールでリンゴ用の紙型に整然と並んで宅配便で届く。しかし、

みちのくの冷えのこもりし林檎着く

という、一句そのものの風情は変わらない。同時に母の句集(http://home.r07.itscom.net/miyazaki/yuki/index.html)にあるのだが

新盆の夫(つま)に会ふため粧へり

という句を自然と口にして、この歳になっても胸がいっぱいになる。九つ違いで、奇しくも同じ七十八歳で亡くなった父は、寡黙であったが、なにかにつけ母は父を大事にしていた。二人とも大病していつもどちらかが入院していて一家が正月揃ったのはブログ子が高校生の時だった。その息子もふた親が亡くなった年齢に近づいてきた。

リンゴは戦後の食糧難の時代にもふんだんに食べられた果物である。米沢に疎開していたときもその後学校の夏休みに訪れた時でも、黙って仏壇に備えられているリンゴを好きなだけ食べて叱られなかったほどで、青い夏リンゴを21個も食べて下痢をしたこともある。ところが産地では中国や東南アジアの富裕層向けに高級品として買ってもらおうという戦略でいるようだ。

新聞記事に、「江刺りんご」のブランドで知られる岩手県奥州市江刺区産の高級リンゴ「サンふじ」の初競りが8日、盛岡市中央卸売市場で行われ、最高級の「特選」は1箱(10キロ・28玉)100万円で落札された。1個あたり約3万6000円になる、とあった。

真っ赤な「サンふじ」は色つやがよく、蜜をたっぷり含んだ甘さが特徴。袋をかぶせない無袋栽培で日光を十分に受け、昼夜の寒暖差が大きい気候から甘さが増している。糖度は一般的なリンゴの13度を上回る15度以上というのがこの高値の理由だそうだ。

届いたリンゴも真っ赤で日光を十分に受けた完熟リンゴで甘い。糖度は調べたことはないが「1個3万6000円」と遜色はないと思う。なによりこういう高値誘導はやめたほうがいい。ブログ子は「ものにはおのずと値段というものがある」と思っている。それが証拠に消費者がリンゴを買う量が年々減少しているという。つまり気軽に食べる果物ではなくなっているのである。それは高級品志向を作為的に作り出し中国の富裕層に買ってもらおうと言うことらしいが、国内消費を落としてまで迎合するのは間違っている。安くてふんだんに食べられるリンゴでなければいずれ産地は自滅すると思う。

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