テンション民族とは日本人に対して言われる言葉だが、どうして、韓国は数段上を行く。リッパート駐韓米大使が親北団体の金基宗(キムギジョン)容疑者(54)に刺されて80針縫う大怪我をした事件で、大統領以下謝罪と反省に上を下への大騒ぎである。
7日午前10時、ソウルの光化門一帯では、リッパート大使がSNSに投稿した「一緒に行きましょう」という言葉をスローガンに、ろうそく文化祭や扇の舞、バレエ、ナンタ(韓国の非言語パフォーマンス)などの公演を開催。午後3時には「お母さん部隊奉仕団」が米韓同盟の強化を訴える集会を開いた。さらに、リッパート大使が退院する日まで、ソウルの米国大使館前には「祈願団」が立っているという。この記事のコメント欄には、「本当に申し訳ありませんでした」「リッパート大使を愛しています」「韓国人として恥ずかしい。ごめんなさい」などといった書き込みが多く見られた。
同じ7日、韓国人の70代の男性が、こともあろうに犬肉とワカメのスープを持って大使が入院する病院を訪れたものの、病院側から丁重に断られたという。韓国では、犬を食用にする習慣があり、犬料理の店まであるというので世界から非難を浴びているのだが、なんでも犬の肉は手術後の回復に効果があると信じられていて入院患者に犬肉を差し入れる風習があるという。
持参した男性に悪気はないのだろうが、リッパート大使は、ソウル市内の邸宅近くで飼い犬の「グリグスビー」を散歩させるなど、愛犬家として知られている。その人に犬肉を贈ればどうなるかぐらい、少し視野を広げてみればわかることなのに、韓国人というのは自己中心的だから、己の考えが正しいとしか考えない。
与党セヌリ党の金武星(キムムソン)代表に対し大使は「私自身はもとより、米国に対する攻撃だ」と述べた上、「事件を克服し、米韓同盟をさらに強固にする努力を続けなければならない」と語った。駐韓大使だからそれくらいあたりまえのセリフだが、金代表は「大使の毅然さに韓国の国民が感銘を受けている」と大感激、最大野党の新政治民主連合の文在寅(ムンジェイン)代表も大使を見舞いに駆けつけるなど与野党問わず謝罪、謝罪である。
下がそうなら上も負けてはいない。事件の時外遊中だった朴槿恵大統領も9日、中東4カ国歴訪から帰国した直後に空港から病院へ直行した。朴氏は「大使の毅然として豪胆な姿に韓米の国民は感動した。韓米関係はむしろ(事件前より)近くなる機会になった」と話し、また、2006年に自分が遊説中に顔を切られ同じ病院で手当てを受けたことを挙げ、2人の経験は似ているとも話した。朴大統領は暴漢に襲われて60針顔を縫ったが米大使はそれより20針多い重症だから痛さもよく分かるのだろう。
米大使館前には写真のように米韓国旗を掲げた市民団体が謝罪に押しかけて、僧侶らしき人物が土下座して謝るなど、最大級の謝罪のオンパレードである。日本に謝罪を求めるばかりの韓国だが、その万分の一でも日本に配慮をしても良さそうなものだと思う。
おかげでシャーマン米国務次官が「歴史問題をめぐる日中韓の対立は3カ国ともに責任がある」という趣旨の発言をしたことに対し、韓国側が「日本寄りだ」と猛反発するなど米韓関係がぎくしゃくしはじめた時だったが、シャーマンの「シャ」の字も消えた。負い目による「対米配慮」が、強硬な対日政策を軟化させる契機になる可能性がある、とする専門家も出てきた。
とりわけブログ子と同じ釜の飯を食った産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の在宅起訴・出国禁止問題ほど理不尽なことはないから、これを解決してもらいたいのだが、「理屈より反日感情」という国柄を見てきたので、日本には柔軟な姿勢はとらないだろう。
今回の事件に対する漫画チックな韓国世論を見ながら、つくづく難儀な国だなあと長嘆息するばかりである。