旅客船転覆事件にみる中韓の技術力

中国中部・湖北省を流れる長江(揚子江)で1日夜に456人乗りの大型客船「東方之星」号が転覆し400人以上が行方不明となっている事故。
転覆して船底が上向きになっている客船をクレーンでつり上げ、180度回転させて元の位置に立て直すというので、中国の技術力が試されている場面なので注目していた。

事故は4日夜、発生から72時間が経過した時点で、中国交通省の徐成光報道官は、「生存者の可能性がないとの総合的な判断の下でクレーン作業を行うことが可能になった」と捜索打ち切りと船体の引き上げ作業開始を宣言。それから一夜のうちの突貫作業で、5日午前には水面下で船体の立て直しをほぼ終了、青い客室の屋根が水面に現れた。驚くべき早さである。

一夜のうちに浮上した「東方之星」号

一夜のうちに浮上した「東方之星」号

中国では、防災計画などないから、事件は想定されていなかっただろうし、訓練が実施されたこともなかったと思う。それなのに前日までに、転覆した船が流されないように固定したうえ、数百キロ下流の上海から呼び寄せたのであろう2隻のクレーン台船を横付けさせ、ダイバーが潜って船体に3本のワイヤーを掛けた上で、水中で船体をひっくり返し、上向きにしてそろりそろりと引き上げた。作業ぶりをコマ撮りした動画を見たが、船体の傾きを見ながら水平に微調整して、同時に水抜きをしながら引き揚げていた。早朝に浮上するや救助隊が入り各船室を叩き割り(夜間で鍵がかかった部屋が多い)遺体を収容し、一気に死者の数は8日までに431人となった。乗船していた456人のうち、これまでに14人の生存が確認されたが、11人が依然として行方不明となっている。

救助隊員がスマートホンで現場を背景に記念写真を撮っているところが暴露されたり、遺族を近づけずに追悼式をやったり、駆けつけた李克強首相の陣頭指揮ぶりばかりを報道する官製メディアに乗客遺族の憤激が爆発するなどいかにも共産党独裁国家らしい強引さが目立ったが、批判など顧みず一挙に片付けたのは見事なものである。

そこで比較されるのが1年前の韓国の「セウォル号」事件である。300人以上の死者・行方不明者を出した旅客船「セウォル号」は同じようにひっくり返った状態で海中にある。遺族からの強い抗議をうけ、朴槿恵大統領は、さっさと船体の引き揚げを約束した。これがどれほど難しいことか、また韓国は高度なサルベージ技術を持ち合わせていない。隣の日本はその技術を持っている。でも反日で、日本を外してイタリアなどに発注するのだという。現在100億円と見積もられる費用は資材をヨーロッパから運ぶからへたすれば倍額かかるであろう、とはこのブログでも書いたところである。

事故当時、真っ先に掛けつけていたクレーン船数隻の姿があったが出番はなく、まもなくどこかに消えた。要するに手が出せなかったのだろうが、今に至るも自国で処理できず欧米に頼らざるをえない韓国は、中国のこの素早いサルベージ技術をさぞかし複雑な思いで見守ったに違いない。金もかかるヨーロッパのサルベージ会社より近くの中国に頼ったほうが安上がりであるが、メンツばかり重んじる韓国にはたしてそれができるかどうか。海流の流れが早い、船体が中国より大きい、など「言い訳」材料は多々あるにせよ、自国にその技術がないことだけははっきりしている。

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