安倍晋三首相は14日夜、都内のホテルで維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長と約3時間にわたり会談した。菅義偉官房長官、維新顧問の松井一郎大阪府知事も同席した。このニュースを聞いた時、維新の松野頼久代表と先ごろまで維新の共同代表だった江田憲司の名前がなかった。そこでピンと来たのだが、橋下市長ら大阪派はついに維新分裂に踏み切ったのである。
会談の中身は公表されていないが、地方の首長相手に首相の「3時間」という異例の直談判である、安保関連法案への協力、憲法改正への共同歩調が含まれていたのだろう。果たして首相との会談から一夜明け、橋下市長はツイッターで猛烈な民主批判を発信した。
「維新の党は民主党とは一線を画すべき」「民主党という政党は日本の国にとってよくない」「維新は民主党とは決定的に違う」――。
これが、「野党再編」路線と言いつつ民主党に擦り寄る松野・江田執行部路線への決別でなくて何なのか。干された江田憲司前代表は15日の講演でさっそく「維新は民主党であれ、自民党であれ、連携していかない」と独自路線を強調。安全保障関連法案に関する修正協議を否定し、法案に「反対する」と明言した。はっきり分裂含みである。
ブログ子は江田憲司が大嫌いである。サツ回り記者の嗅覚で、この手の顎が突き出てベタッとした顔はペテン師に多いせいもある。メディアでは顔つきで人を批評してはいけないことになっているので、ここは訂正するとして、江田憲司が、政界入りしてからの裏切り、内紛の張本人でありつづけ、中で懐柔した議員を引き連れて新党立ち上げては他の党に恩を着せて潜り込むという政治行動が嫌いなのだ。
当初みんなの党に所属していた江田氏は渡辺喜美氏の党運営などを批判。自らに同調する議員とともに新たに「結いの党を結成した。ブログ子は父親のミッチーこと渡辺美智雄議員には2度ほど赤坂の議員宿舎に招き入れられ、サンマかイワシを自ら焼いてごちそうしてもらったことがある。その時そばで今と同じ顔でニコニコしながら受験勉強していたのが喜美氏である。人が良すぎた。
みんなの党は一時ブームでかなりの議員を当選させた。渡辺氏の「個人商店」とも言われたが、その党勢拡大には渡辺氏の力にかなりの部分を依存していた。だが脇が甘かった。8億円をある社長から借り入れて「子分」の選挙資金などの面倒をみた。ところがこの金の使い途が問題になり、説明責任が果たせなかった。
だが、そのとき江田氏は、親分を非難した上、渡辺氏がえいえいと発掘・擁立した議員のうち15人を引き連れて、党を飛び出し「結の党」をつくった。渡辺氏からみると、自らが育てた所属議員を江田氏に奪われたことになる。いわば、踏み台にされた形だ。8億円の何分の一かを面倒見てもらった恩義があるはずなのにそこは連中知らん顔で新党に駆け込んだ。
「結の党」15人を手土産に今度は維新の党に接近した。維新の党には代表や共同代表をつとめた石原慎太郎・現次世代の党最高顧問がいた。石原氏は合流にあたって、自主憲法制定の文言を政策合意に盛り込むことにこだわった。だが、江田氏は自主憲法制定ではなく憲法改正にとどめるよう頑強に抵抗。結局、橋下氏が江田氏に同調し、石原氏は党を飛び出さざるを得なくなった。つまり、江田氏は憲法問題についてハードルを設けることで、もともと基本的な政策の違いから不協和音があった維新内の対立をさらに誘発させたのである。
こうして維新の党共同代表におさまった。橋下共同代表は大阪都構想に専念してやがて負けるのだが、江田氏にとってこれは好都合だった。橋下氏の影響力をできるだけ削いで、国会運営などで主導権を握ることができるからだ。彼が維新の党に接近した理由は選挙である。
結いの党の結党に参加した議員のうち、衆院の小選挙区で勝ち上がってきたのは江田氏(神奈川8区)自身と柿沢未途氏(東京15区)の2人のみ。あとは渡辺個人商店で金と地盤の面倒を見てもらった輩ばかりである。次の選挙で負けるのは目に見えている。江田氏が維新との新党結成を急いだ理由はそこにある。橋下氏のネームバリューと維新の地盤は魅力だったのだ。
その後の江田氏の行動を見ると、維新に所属する国会議員や地方議員の多くを自派に取り込むことに専念してきたきらいがある。さすがの橋下氏も住民投票後の5月末の記者会見で「次の人たちにバトンタッチして、やってもらっていかないと。個人商店じゃないわけですからね」と述べ、12月の任期いっぱいで「ただの人」になることを宣言したものの、次第に維新が江田氏の影響下に置かれていくことを危惧したのだろう。気付いたら自らの周辺から人が去ってしまっていたということにもなりかねない。みんなの党の渡辺氏がそうなってしまったように…。
そうした心の葛藤を見透かした安倍首相が声を掛けたのだろう。(どちらが会談を呼びかけたかまだ公表されていない)。維新分裂へまっしぐら、と見た。江田がいない維新なら大歓迎である。