世論と常識が勝ち取った最高裁判決

ブログ子は第3小法廷の判決が出る午後3時を心配しながら待った。結果は先のこのブログで「鉄道会社は”泣き寝入り”の美徳に戻れ」で書いた通りでホッと胸をなでおろした。
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 責任能力がない認知症男性=当時(91)=が徘徊中に電車にはねられ死亡した事故で、家族が鉄道会社への賠償責任を負うかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、男性の妻に賠償を命じた2審名古屋高裁判決を破棄、JR東海側の逆転敗訴を言い渡した。判決が確定した。

JR共和駅構内の事故現場付近

JR共和駅構内の事故現場付近


 争点は認知症高齢者を介護する家族の監督義務。民法714条では、認知症などが原因で責任能力がない人が損害を与えた場合、被害者救済として「監督義務者」が原則として賠償責任を負うと規定している。1審名古屋地裁は、「目を離さず見守ることを怠った」と男性の妻の責任を認定。長男も「事実上の監督者で適切な措置を取らなかった」として2人に請求通り720万円の賠償を命令した。2審名古屋高裁は「20年以上男性と別居しており、監督者に該当しない」として長男への請求を棄却。妻の責任は1審に続き認定し、359万円の支払いを命じた。

ただ、同居していた妻は高齢の上、「要介護1」の認定を受けていたなど「監督義務を負わせるのは酷だ」と、1、2審判決に批判も多い。また、介護の方針を決定していたとされる長男の責任についても、認知症を抱える家族らから「同居していない家族に責任を負わせれば、家族による積極関与が失われ、介護の現場は崩壊する」と反発が出ていた。

 平成19年12月7日、愛知県大府市で徘徊症状のある男性が電車にはねられ死亡。男性は当時「要介護4」の認定を受けていたが、同居していた当時85歳の妻らが目を離したすきに男性は外出していた。事故後、JR東海と遺族は賠償について協議したが合意に至らず、22年、JR側が「運行に支障が出た」として遺族に720万円の支払いを求めて提訴した。
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世論の力が大きかった。六法全書しか見ていない法曹に任せていたら地裁、高裁のような判決しか出なかったろう。最高裁判事5人全員一致だというから、猛烈なブーイングに耳を傾けざるを得なかったのだろう。

認知症の父親を事故で失ってから約8年。長男は「いろいろなことがあった」と振り返り、最高裁判決に「大変温かい判断をいただいた。良い結果に父も喜んでいると思う」とコメントで感謝を込めた。

JR東海は「個々にはお気の毒な事情があることは十分に承知しているが、当社としては、列車の運行に支障が生じ、振替輸送に係る費用なども発生したことから、裁判所の判断を求めたものであります。今回の判決については、最高裁の判決でありますので、真摯に受け止めます」というコメントを発表した。 「個々には事情もあること」を十分に承知してたのなら、そもそも裁判になど訴えるべきではなかったのだ。過去の鉄道会社は惻隠の情で、ブログに書いたように温情ある「泣き寝入り」で対応してきた。裁判所の判断など求めてどうするんだといいたい。

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