大山鳴動して鼠一匹も出ず

ishihara豊洲市場(東京都江東区)の移転問題を検証する都議会百条委員会は20日、市場移転を決断した当時の知事だった石原慎太郎氏の証人喚問を行った。石原氏は「都庁全体の流れで市場を豊洲に移転することを決定した」と述べた上で、「ピラミッドの頂点として移転を裁可した責任は認める」と述べた。東京ガスとの用地買収交渉は「部下に一任していた」とこれまでの主張を踏襲した。

また、移転延期を判断した小池百合子都知事に対して「科学者が安全と言うのに、なぜ移転しないのか不可解だし、不作為の責任が問われるべきだ。都民を第一に考えて移転しなければならない」と批判した。 用地買収の交渉役だった浜渦武生元副知事と東ガスの間で水面下交渉があったとされる経緯は「一任していた。報告を詳細に受けていない」と主張。一方、豊洲移転にあたり地下水の有害物質を環境基準以下にするとした知事時代の方針を「私にとって重要案件ではなかった。基準のハードルが高すぎた」とも述べた。

百条委は同日までに石原氏を含む計21人の証人喚問を実施。しかし、(1)土壌汚染のある豊洲への移転をなぜ決めたのか(2)東京ガスに追加の土壌汚染対策費を求めないと決めた経緯-について、核心的な証言を得ることができなかった。

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中継のほとんどを見たが、すべての都議の質問が拙劣、かつ新聞記事のなぞりで目新しいものなど何一つなかった。「大山鳴動して鼠一匹」というが、ただの一匹も出てこなかった。メディアは「百条委員会は偽証罪に問われる」云々と大げさに騒いでいたが、あほらしい、攻めるほうが材料もなしで、入れ代わり立ち代わり同じことを質問しているようでは、何が出てくるというのだろう。

先の浜渦武生・元副知事の証人喚問では「(浜渦氏の東ガスとの交渉により)混乱を招いた責任を感じないか」と指摘された時、「どこに責任があるんですか。当時はですね、ここにも数人(の都議が)いますが、『よくぞ東ガスと交渉をまとめてくれた』と称賛された」。声を荒らげてこう話すと、証言席の机を手でたたき、都議の質問が終わった直後、浜渦氏は自席でつぶやいた。「水面下で質問したら、答えてやるよ」

強面でなった人物に幼稚な都議が吞まれている趣が垣間見えていたが、この日の石原元知事もしかり。

質問が長い都議には「簡潔に質問して」「だったら何ですか」と迫るなど、往年の“石原節”で余裕しゃくしゃく。移転を決裁したのは石原氏自身か、執行責任を認めるか、と問われて

「まさしくそうだ。知事本局長がある時、私の所に来て『決裁を願いたい』と。私は豊洲の土壌汚染の問題は解決できるかと聞いたら、報告者は今の技術を持って可能というので決裁した。行政は司(つかさ)、司が専門性を踏まえて審議して、積み上げてピラミッドを作るようなものだ。当時のピラミッドの頂点にいた私が最終的に報告を受け、全体の総意として決まった。その責任は私は認める」

物わかりの悪い部下に、トップの在り方を説教するような口調だった。生活者ネット・小松久子氏などは「都政を部下に丸投げし、組織のトップとして知るべき事を知らなかったのは怠慢だ」と質問者なのに批判にすり替えて迫るのもいたが、

「私は関心があったことに自分自身でコミットした。それが行政の責任者の当たり前の姿勢だ」と軽くいなされて退散する始末。

――豊洲移転が延期している現状をどう考えるか、と問い詰められても

「小池百合子知事が豊洲市場への移転延期を議会に諮らずに発表したことは、議会軽視の最たるもの。彼女の不作為の責任を問うべきだ。(小池氏に対する)民事訴訟がどうして起こらないか不思議なくらいだ」

かねての持論をとうとうと展開されて顔色なし。全体に「役者が上だ」という印象しかなかった。大声で石原氏を批判する発言を繰り返した2人の傍聴者が退場を命じられたが、どこの所属なのか報道してもらいたかったくらいだ。

ブログ子はかねてから「さっさと豊洲に移ればいい」と述べている。築地に戻るようなことがあれば大混乱であろう。もともと安全については土壌汚染対策を検討する専門家会議が「食の安全に問題はない」としている。ただ、安心については明確な基準がなく、豊洲への移転の可否について消費者目線を重視する小池都知事の「胸先三寸」に任されている。どうしても、今夏の都議選に向けて、敵を作る必要があるという戦略を続けるなら、たちまちのうちに風向きが変わるのも、政治の世界である。

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