北朝鮮から前週解放された米国人大学生のオットー・ワームビア氏(22)が治療を受けていた米オハイオ州シンシナティの病院で6月19日、死去した。ワームビア氏の家族が声明で発表した。
ワームビア氏は北朝鮮で1年5カ月間拘束され、13日に昏睡状態で帰国した。治療に当たった医師団は、同氏に深刻な脳損傷が見られ、「反応がない覚醒状態」にあると述べていた。
トランプ米大統領は遺族に哀悼の意を伝え、北朝鮮について「残忍な政権」で「基本的な良識」の尊重を欠いていると非難した。
ワームビア氏はツアーで北朝鮮を訪問中に拘束された。現地メディアは政治スローガンが書かれた物を盗もうとしたことが理由と伝えている。
遺族によると、同氏は15年の労働教化刑を言い渡された直後の2016年3月に昏睡状態に陥った。北朝鮮側は同氏がボツリヌス菌に感染し、睡眠薬を服用したと説明したが、医師団はこれに関してボツリヌス菌は検出されなかったと述べた。
また、ソーントン国務次官補代行(東アジア太平洋担当)は、米国政府が北朝鮮に拘束されている他の米国人3人の状況を懸念していると述べた。
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「デイリー・メール」紙(イギリスで一番古いタブロイド紙)の見出しは、写真のように「金正恩が我々の息子を殺した」。家族の言葉を引用したものだが、同時に英米の一般市民の感情でもある。
北朝鮮側は、「ボツリヌス菌の毒素による中毒で体調を崩し、睡眠薬を服用後に昏睡状態になった」と説明している。ボツリヌス菌が産生する毒素(ボツリヌス毒素)によって起こる食中毒で、オウム真理教が生物テロ兵器として使用を試みたことがある「史上最強の猛毒」である。青酸カリよりもフグ毒よりもサリンよりもVXガスよりも強力で、500 gのボツリヌス毒素があれば全人類を確実に殺すことができる。
北朝鮮は生物化学兵器として大量に所有しているから、これを拷問に使ったのかなどと憶測されたものの、アメリカの担当医師は「ボツリヌス菌による中毒の症状は見られない」と指摘している。
ボツリヌス中毒の症状は筋肉の麻痺で、重症では呼吸筋も麻痺するために息ができなくなって死んでしまう。ワームビア氏の症状は「昏睡状態にあり、脳内には広範囲における脳細胞の壊死が見られる。呼吸停止状態において見られる症状もある」(アメリカの医師)、まさしくボツリヌス中毒だが、菌がでないとなると、北朝鮮は体内から消す方法を持っているのか。