毎日のように「人身事故による列車の遅れ」が伝えられるが、2017年4月、カナダ・トロントのダンダス駅で撮影されたこの動画は少し違った。
動画を再生するとまず「君は素晴らしい」と話す声が飛び込んでくる。この声の主こそ、“神対応” を見せたジョン・ポール・アタードさんだ。
赤いキャップをかぶりホームに腰掛けているアタードさんは、この駅の駅員。線路に立つ1人の男性を抱きしめている。自らの命を絶とうと線路に立ち入った男性を慰めているところなのだ。
https://www.facebook.com/marta.bento.37/videos/10154605507010544/
地元メディア『Toronto Sun』によると、線路に立ち入った男性に気付いたアタードさんは、駅に向かっている途中だった電車を止めてから、線路上の男性の前に腰掛けて「今日、嫌なことがあったのかい?」と話しかけ始めたという。
「嫌なことがあった」と返事した男性の腕には病院のタグが巻かれ、体は震えていたそうだ。
アタードさんは男性を抱きしめ、何度か深呼吸をさせ勇気づけてから、男性に「私は強い」と声に出して繰り返させた。動画の中でも、男性はアタードさんの体にしがみつきながら、「私は強い」と何度も繰り返している。
するとアタードさんは、その場に居合わせた乗客にも声をかけ「私は強い」と唱和させ始める。固唾をのんで成り行きを見守っていた乗客たちも、アタードさんの声にあわせて「私は強い」と大声で繰り返していく。
その後、男性に何かを言い聞かせるアタードさん。警官が近づこうとするが手を振って遠ざける。男性はアタードさんの声に静かに耳を傾け、最後には力強くアタードさんと抱擁を交わすのだった。男性が警察と共にホームを去っていく際に、アタードさんは協力してくれた乗客にも両手を握る仕草で感謝を表しており、周囲からはあたたかな拍手が巻き起こった。
アタードさんの行為はまさに神。いや、ヒーローだ。だが彼自身は、特別なことをしたとは思っていないと話す。「ストレスはとても深刻な問題です。心の病が周囲に気付かれない人だっています。誰だって人間です。私たちは苦しむ人々を大切に扱わなければならない。そうすることで、世界をより良くしていけます」
(「ロケットニュース」から)