と書くと、男女同権の錦の御旗を掲げた筋からクレームが来そうだ。でもやはり軍事知識に乏しい人物が座るイスではない。女性は平和の象徴としてしかるべき閣僚ポストに座っていてもらいたいものだ。
防衛省になってからだけでも、15人が防衛大臣になった。この間、男性、それもかなりの硬派がつとめてきた。もっとも田中直紀などというメモ棒読みで子供並み答弁で周りをはらはらさせた御仁もいた。女性は2人で、わずか1カ月ほどで評価をするまもなく去った小池百合子(現都知事)に次ぎ稲田氏がすでに3年余、「在任期間」だけはベテランだがこれまでよくもった、というのが実態で、事務方の奮闘の賜物だろう。
彼女の発言だが、東京都議選の投開票日(7月2日)を目前に 27日に自民党候補の応援に出かけたのはよいが、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と演説した。どれだけやばい発言だったか本人は自覚してないようで、その後記者とのやりとりでもにこやかに説明しているのをみても明らかだ。
自らの指揮監督下にある職員・隊員に法律に抵触する政治的行為を求めたといわれかねない内容である。「政務と公務を混同した」未熟極まりない発言で、こんなことは一般人ですらイロハのイで心得ている。現場にいた記者たちはたちどころに問題発言と認識しただろうし、その後の展開もメディアで大きくなった。閣僚やその役所の立場で選挙の応援をお願いする、など絶対言ってはいけない。自衛隊内を取材したことがあるが、選挙では士官はじめ一般隊員ですら政治的発言ととられないようピリピリしているものだ。それが、自衛隊で一番の親分がこれでは下は「やってられない」気持ちだろう。
野党はすぐ反応した。民進党の蓮舫代表は「もはや辞任のレベルではなく、安倍晋三首相がきちっと罷免すべきだ」と述べた。そのあと「防衛大臣の責務を理解していないとしか思えない。自衛隊員の士気にも関わる。一日も早くお引き頂くことが自衛隊員のためにも、国民の安全のためにベストだ」と話した。自分の二重国籍問題にいまだにあいまいで民進党内での士気を低下させている御仁に「士気」を言われるとはお笑いだ。
蓮舫氏の方は、この都議選で民進党は7人立ててせいぜい1人と言われているから、一足早く7月中旬にはクビが飛ぶだろう。稲田氏の方も8月下旬に内閣改造があるそうだから真っ先に退場してもらえばよい。
自分がいた新聞社で、防衛庁(当時)担当記者を選ぶとき、第一に軍事知識の豊富な人間を選んだ。「軍事オタク」といわれるような人間でもまず航空機と軍艦・潜水艦知識の豊富なものを選任した。でないと明日から現場に行って隊員と接触するのにたちまち馬脚をあらわして馬鹿にされるか、よくて体よくあしらわれるかのどちらかだからだ。
「軍事知識のある女性記者」というのは社内を見回しても一人もいなかった。いまでもそうだろう。プラモデルの戦車を組み立てるなど、素養があるのは男の子と相場が決まっているものだ。稲田防衛相は国会答弁でも記者会見でもメモの棒読みと事務方が用意した答弁用紙を読む場面が多すぎた。ほかに活躍の場を求められることだ。