ゴーン前会長が保釈される東京拘置所からの中継を見るともなく見ていて、なんという情けない姿を晒すのかとあきれ果てた。
前会長は6日午後4時半ごろ、東京拘置所職員とみられる約10人に囲まれて拘置所の玄関を出た。青い帽子に眼鏡とマスク、紺色の作業着にはオレンジ色の反射材が貼り付けられていた。どうみても作業員風である。乗り込んだ春日部ナンバーの軽自動車は日産でなくスズキ製。クルマに塗装会社名、帽子は鉄道関係の会社・・・手の込んだ変装をほどこしていた。
ゴーン被告は、海外の広報担当者を通じ、「私は無実であり、公正な裁判で強く抗弁する」との声明を出している。海外メディアの取材には、「(日産の)陰謀であり、裏切りだ」と、日産の経営陣に激しい怒りを示している。それほど、潔白を広言するなら、釈放にあたっては、きちんとしたスーツ姿で、詰めかけた報道陣の前で正義を語り、いまなお役員である日産のクルマで立ち去ればいい。情けない変装姿がなかったらずっと印象は違ったものになっていただろうに。
演出したのは「無罪請負人」の異名をとる弘中惇一郎弁護士事務所。弁護団は「保釈後のゴーン前会長の住居をマスコミに割り出されるのは困る。拘置所周辺で待機している報道機関に分からないように拘置所を出たい」と考え、苦肉の策として変装に踏み切ったという。
一見もっともらしいが、この日ゴーン被告は拘置所を出た後JR秋葉原駅近くの弁護士事務所に移動し、約2時間後、スーツ姿で車に乗り込んでホテルに入っている。家族と過ごして張り込んでいる取材陣のすきをついて都内の自宅に入るつもりであろう。小細工などせず最初から拘置所をスーツ姿ででて一言コメントしてそのホテルに入ったところで同じである。
自宅住所を隠したいらしいが、自分が新聞記者なら日産が購入したのだろうからすでに明らかになっている資産台帳にあるだろうし、そのいくつかは写真付きですでに報道されているから、早晩割り出すことはできると思う。
弘中弁護士は「無罪にできる」と大言壮語しているようだが、108日たってもゴーン被告が実姉に実態がないのに日産から報酬を支払わせていた強欲ぶりがあぶりだされている。いくら高額報酬が約束されていても並大抵のことではあるまい。今回の演出を見ていて、いかな弘中弁護士でも大した結果は期待できないな、と予感した。