麻生太郎財務相は5日の記者会見で、前日の国会答弁で日本の新型コロナウイルスによる死者が欧米諸国と比べ少ないことを「国民の民度のレベルが違う」と発言したことで野党などから批判が出たことを問われ、「みんな我慢したんじゃないのか。罰金もないのに。違反でもないのに。それはもっと誇ってしかるべきだと思う」と強調した。
新型コロナの感染拡大に対して、海外がロックダウン(都市封鎖)などの厳しい防止策を実施したのに比べ、日本は外出自粛や休業要請を柱とする比較的穏やかな対応にとどめた。
麻生氏は「ほかの国は強制力をもってしてもできていない。暴動が起きたり、外に出たりしている」と指摘。その上で「日本人として“お願いモード”だけでこれだけできたのは、もっと誇りに思っていいのではないか。そういう話を基本的にしている」と説明した。
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日本人の大多数が口にしないものの麻生発言のとおりだと思っている。確かに、憲法が許さないから「命令」などできなくて「要請」止まりの緊急事態法だったが、ターミナルの人出は90%減り、行楽地の観光客はほぼゼロになり、飲食店からは客が消えた。おかげでなんとかコロナ禍から脱出の目処がついてきたのは、まさに日本人の「民度」の高さであろう。だれに命令されるわけでもなく、罰則もないのに日本人は2ヶ月間黙って耐えてきた。これを民度の高さと言わずしてなんというのか。
ところがこれが気に食わないメディアがある。例によって朝日新聞を始めとする「反安倍アジビラメディア」である。
6日の朝日新聞では「蓮舫氏『どれだけ偉いの?』 民度発言の麻生氏を非難」の見出しでこう非難している。
麻生太郎財務相が「民度のレベルが違う」と言及したことに対し、ツイッター上で、野党議員からの批判が相次いだ。立憲民主党の蓮舫副代表は「貴方(あなた)はどれだけ偉いのでしょう、麻生大臣」と投稿した。
麻生氏は4日の国会で、日本の人口あたりの死者が米英仏に比べて少ないと強調。他国の人から問い合わせを受けたとして、「そういった人には『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、みんな絶句して黙る」とのエピソードを紹介した。
この発言に、蓮舫氏は「国籍を問わずコロナ感染症で亡くなった方、そのご家族のお気持ちに寄り添わず、『民度』の違いとの認識を国会で披露。日本の財務大臣発言として海外に発信されてほしくない」とツイート。
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麻生氏はホントはどういう言い方をしたのか。探したらハフポストの中村 かさね記者の詳細な記事が5日付けであった。ハフポストというのは知らない方もいるかと思うが電子版で朝日新聞のダミーを務めるメディアである。「非科学的な持論を展開した」と朝日を忖度した見出しだが揚げ足を取るため詳細に発言を紹介しているので参考にすると、麻生氏はこう発言している。。
6月4日に開かれた参院財政金融委員会で、麻生氏の見解を問うた自民党・中西健治氏の質問に麻生太郎財務相が日本の新型コロナ対策の成果について非科学的な持論を展開した。
どうして日本だけこうなったのか、色々、厚生(労働)省とか医者とかが、後でもう一回検証してもらわなきゃいかんのだと思いますけれども。少なくとも、日本は罰金などなく、お願いだけでこれだけきた。
こういうのは死亡率が1番問題なんですけども、調べてみたら人口比で100万人当たり日本(の死者数)は7人ということになるんですよね。こういうのは、結果は死亡者ですから。戦争もなにもみんな、最終的に死亡者が何人でその戦争が勝ったか負けたか、って言われるような話になりますんで。フランスの場合は間違いなく228人、アメリカが824人、イギリスで309人、日本は7人。
「なんかお前らだけ薬を持ってるのか」って、よく電話がかかってきた時、よく言われたもんでしたけども。あの、私どもとしては、そういった人たちの質問には、「お宅とはうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ」と言って、いつもいってやると、みんな、絶句して黙るんですけれども。それで後の質問が来なくなるんで、それが一番簡単な答えだと思って、あの、クオリティが違うという話をよくしてましたけど、このところ、その種の電話もなくなりましたから、何となく、定着しつつあるんだと思いますけれども。
やっぱりこういった島国ですから、なんとなく連帯的なものも強かったし、いろんな意味で国民が政府の要請に対して極めて協調してもらったっていうことなんだと思いますけれども。いろんな意味で暴動が起きたわけでもなし、国民性、いろんな表現があるんだと思いますけれども、結果論としてこれは良かったんだと思って。
また「DNAがどうした」とか、みんな分かったようなことをテレビで言っている人がいますけど、ああいった人はついこの間まで「このままいったら45万人死ぬ」って言ってた人たちが、よう、どのツラ下げてあんなこと言えんのかね、と思うぐらい言ってますわねえ。不思議だなあと思って、いつも。それだけ表現は自由なんでしょうなぁ。それは間違いなく自由だと思って聞いてますけど。
いずれにしても、なんとなく、先進国の中でもっとも死亡率が低くて絶対数も圧倒的に少ないですから、その意味では国民のご協力があったというのが1番、それに尽きるんだと思いますけれども。いずれにしても、かなり海外から見れば緩いお願いレベルの話であってもこれだけ効果が上がったということは、これはもう我々としては誇りに思わなければいかん大事なことだと思っています。
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堂々とした「日本人論」ではないか。ブログ子としては新渡戸稲造の「武士道」を引き合いに出してほしかった。日本人の隅々にまで身につけている自律心とか、誰も見ていなくとも約束は守る、恥を知る文化とかである。
日本には「人品骨柄」という言葉がある。「人品骨柄正しい」とか「人品骨柄卑しからぬ」とか使う。「人品」はその人が持っている品性や気品のこと。 「骨柄」は体つきから感じられる風格や品性のことである。麻生太郎財務相は麻生財閥の流れを組み皇室とも縁戚にありまさに「人品骨柄卑しからぬ」人である。ただそれを恥じるのか、ボルサリーノの高級帽子でまるでマフィアの親分のような風体で日銀総裁と揃って 海外に出かけたり、麻生節というかベランメエ口調で独特の持論を展開してよく舌禍事件を起こす。
しかし、言っていることはまさに正論である。日本人としての矜持を持っている人物である。まあ、人品骨柄卑しい朝日新聞とその流れを組むメディアには悔しかろうが。
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この項は昨日書いてアップする予定だったが、質問者の中西健治氏のことでわからないところがあって調べなおすつもりで一晩置いた。翌朝、「産経抄」をみたら、まさに言わんとするところをきれいにまとめられていた。筆者はブログ子の後輩に当たる田中規雄論説委員で、10数年の年の差があり、新卒採用時に面接したり、新人記者教育担当をつとめた間柄だ。よく書けているのでそのまま再録させてもらう。
「産経抄」(6月6日)
日本人が日本の特長を誇ることが、まるで恥ずかしいよくないことのように非難されるのも、戦後の悪弊だろう。麻生太郎財務相は4日の国会で、新型コロナウイルス感染症による死者が、欧米主要国に比べ日本で極端に少ない理由についてこう述べた。「国民の民度が違う」。
▼ロックダウン(都市封鎖)など欧米が実施した強制的な措置は、法制上取れないにもかかわらず、自粛要請や呼びかけが奏功した「謎」に関し、外国から問い合わせがきた際に答えた言葉だという。これに早速、立憲民主党の蓮舫副代表がツイッターでかみついた。「貴方はどれだけ偉いのでしょう、麻生大臣」。
▼国民の文化程度の高さに自信を示すことが、どうして麻生氏自身が偉いという話になるのか文脈が分からない。蓮舫氏は「国籍を問わずコロナ感染症で亡くなった方、そのご家族のお気持ちに寄り添わず…」とも批判していたが、牽強(けんきょう)付会に過ぎよう。
▼麻生発言に関しては、予想通り数紙が5日付朝刊で批判的に取り上げていた。「他の国をおとしめることになりかねない発言だ」(朝日)、「波紋を広げる可能性がある」(毎日)。韓国のように自国のコロナ対応を自賛して日本を見下す国は、特に問題視しないにもかかわらず。
▼5日付小紙朝刊の国際面では、三井美奈記者が緩みが目立つフランスの今を報告していた。ルールに抵抗する国民性から、政府は問答無用の法律で押し付けるしかないのだという。記事は「国のかたちはさまざまだ」と締めくくる。
▼各国それぞれだからこそ、日本も日本流のやり方に自信を持っていい。ところが、日本が他国より劣っていたり、失敗して叱られたりしていないと落ち着かない奇病が、一部で重篤化している。