「酉の市で熊手を買った」では通らない

昨日の孫娘の話の続きで恐縮だが、一番上の小3になる優妃の号泣の話。昨年、映画かアニメが知らないがあの「おしん」を観に行った。おばあちゃんが万一の時にとおしんのお守りにお金を縫いつけてくれたのを主人に盗んだと疑われて取り上げられるシーンがあった。その時優妃はすっくと座席を立ち、「それはおばあちゃんからもらったものだよー」と画面に向かい号泣しながら叫んだそうだ。大笑いしたのち、幼い子どもの正義感に胸を打たれたが、それほど金の出処が「きれい」かどうか証明するのは難しい。

stt14032721500015-p3みんなの党の渡辺喜美代表は27日、国会内で記者団に対し、化粧品販売会社ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から計8億円借り入れた事実を認めた。その上で「純粋に個人として借りた。違法性の認識はない」と述べ、選挙費用や政治資金に充てていないとし、代表辞任も否定した。具体例に使い途を問われて「酉の市でかなり大きい熊手」を買ったことを挙げた

政治資金規正法や公選法に抵触するから口が裂けても選挙に使ったとはいえない事情はわかるが、「熊手を買った」では通るまい。有り体に言えば、みんなの党で候補者を何十人か立てた際、軍資金として配ったものだろう。みんなの党を出て結の党を結成した江田憲司代表以下衆参両議員15人も貰ったのだろうが、貰った側は口をつぐみ知らぬ顔の半兵衛を決め込むから親分が責を負うしかあるまい。「渡辺の個人商店」と言われるみんなの党である。分裂する可能性が大である。

ブログ子は今年の年賀状で、野党は民主党、維新、みんな、結、社民こぞって「馬糞(まぐそ)の川流れ」を予測したが、以外に早く来た。それにしても「週刊新潮」で暴露した化粧品販売会社ディーエイチシー(DHC)も、会長の吉田嘉明氏(73)もはじめて聞く名前だ。検索したら千葉県の氏の豪邸の写真が出てきた。日本の金持ち10何番目かにランクされるそうだが、化粧品会社というのは8億円をポンと出せるほど儲かるものなのか。

驚いたのは佐賀県唐津市出身だということ。ブログ子の父は唐津の近くの寒村の出で、親戚の多くは今も市の近在にいて、先祖代々の墓は唐津市内にあり、ブログ子もいずれそちらにお世話になる身だが、周りにそれほどの金持ちは一人としていない。

政界には政治ゴロという手合からスポンサーを気取って政治を動かす「気分」に浸る趣味の持ち主までいろいろいる。何かと官庁の規制が多い業界ではなんとか免れたいと政治家に接近し、金で動かそうとする輩も多い。今回表に出たのは、規制が多い化粧品や健康食品分野で政治を動かそうとしたのだろう。なんでも吉田会長はみんなは維新と合流するべきだとの立場だったが、渡辺代表は、維新と一線を画し始めたために堪忍袋の緒を切った。分裂した結の党・江田憲司代表のその後の維新接近工作を見ると合点がいく。

27日の記者会見で「吉田さんの怒りを買った。言うことを聞かなければ追い落とすと言われ、それを実行に移された」と語っている。吉田会長は渡辺代表が江田一派の離党を認めないことに、メールでたびたび「会派離脱を認めるべきだ」と不満を露わにしていたそうだから、週刊誌を使って追い落とし工作に出たものだろう。

渡辺代表の父親は衆知のように「ミッチー」で親しまれた渡辺美智雄である。副総理、蔵相、外相などを歴任。中曽根派を継承して派閥の領袖として総理の座を目指したが病に倒れた。

ミッチーはマスコミを大事にした。ブログ子は番記者ではなかったが何度もクルマに同乗したことがある。あるとき、赤坂見附で下車、私とカメラマンを自宅に誘った。一ツ木通りの魚屋でサンマかイワシか忘れたが、人数分買ってぶらぶらと歩き、赤坂の議員宿舎で自ら魚を焼いてくれた。その時ふすまの向こうからにこにこと現在とほとんど同じ顔で受験勉強していた息子を紹介してくれた。

派閥を率いてカネ集めに苦労した親父を見て、同じ手法でみんなの党の資金集めをしたのが落とし穴だった。今後分裂含みで推移するのだろうが、結の党も似た結末に向かうと見る。普通金を出した側は表に出ないものだが、今回はスポンサーに刺された政治家の最初のケースになるのではないか。今後、みんなの党から化粧品業界擁護の国会質問などが明らかになれば、金を出した側、受け取った側ともに受託収賄罪に問われる事件に発展しかねない。それほど高くつきそうな「熊手」なのである。

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