【ジャカルタ時事】インドネシア海軍は24日、消息不明となっている潜水艦「KRIナンガラ402」について「沈没した」と認めた。潜水艦の内外に備わっている部品が回収されたためで、ユド司令官は記者会見で「大きな損傷の発生を示している」と述べた。
乗組員の脱出スーツが見つかったのが決定的だった
回収された部品は、潜望鏡の潤滑剤や魚雷発射管の整流装置など。ナンガラ402が潜水した場所から約3キロの海域で、浮遊する燃料と一緒に発見された。軍の記者会見によると、無人潜水機が深度838メートルの海中で艦体を発見し、方向舵や船尾の一部を撮影した。
決定的だったのは、捜索で潜水艦脱出スーツが見つかったこと。海軍参謀長は、「このスーツは非常時の脱出用にのみ使われ、普段は箱の中に保管されている。だがそれが外に出ていた。乗員が装着しようとしたが、間に合わなかったと思われる」と語った。
同参謀長によると、潜水艦は深さ850メートルの海底で発見され、艦体は3つに分裂していた。停電で制御不能となり、設計上耐えられる水深(500メートルよりも深い場所へ沈没。強い水圧を受けて破壊したと見られる。
ナンガラ402はバリ島沖で21日未明(日本時間同)、潜水を始めた直後に音信が途絶した。このとき、停電が起きた可能性がある。艦内の酸素は72時間後の24日未明(同)に尽きたと見られるが、それ以前に艦体破壊が起きたものと見られる。
ロイター通信によると、潜水艦は大破した状態で水深約850メートルの場所にあるという。この潜水艦が水圧に耐えられる約500メートルよりも深く沈んだため大破したとみられる。
水中カメラで撮影された、潜水艦のいかりとみられる物体(インドネシア海軍提供)
現場海域では24日もインドネシア海軍や米軍などが船舶や哨戒機で救助活動を実施していた。インドネシアのプラボウォ国防相は23日、オースティン米国防長官と電話で協議した際、米国の支援に感謝の意を示した。
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最悪の結果になった。この潜水艦はドイツ製の「KRIナンガラ」。1981年、インドネシアに引き渡され、建造後40年経過している。日本の潜水艦は建造後16年で退役しているから、ポンコツとはいえ、海洋国家を目指しているインドネシアでは予算難からさらに使うこととして韓国に改修を依頼して事故寸前に引き渡され、初航海していた。
回収された部品から推定されることは、「KRIナンガラ」は潜航中何らかの原因で電池室に浸水して電池が爆発したか、魚雷発射時に船体が破壊したか、などが考えられる。
それにしてもなぜ日本に救助要請がなかったのか。ロシアでも潜水艦事故に際しては日本に救助要請を出している。日本が最新鋭の潜水艦救難艦を持っていることを知っているからだ。インドネシア側は日本の「ちよだ」の存在を知っているのに、持っていないオーストラリアとシンガポールに救援要請をしたものの、日本にはしなかった。米国には航空機による捜索支援のみ頼んでいる。つまり、早い段階で船体破壊が起きていることを把握していたのではないか。だから日本から駆けつけても間に合わないと判断していたのではなかろうか。
通常動力型潜水艦建造技術に関しては日本はロシア、ドイツと並んで世界最強である。深度1000メートルでも壊れない耐圧力は日本の技術である鋼板「NS110鋼材」からもたらされる。加えて毎年1隻は進水している「そうりゅう」型は非大気依存推進である。普通の潜水艦は乗員と内燃機関に必要な空気を取り込むため、3,4日に一回は浮上しなければならないが、「そうりゅう型」は、液体酸素を積んでいて2週間は浮上しないで潜水できる。
インドネシア潜水艦は韓国で改修されたように韓国は潜水艦建造技術を誇っているものの、それはドイツの「21型」をライセンス生産しているだけで、自国の技術ではない。さらに潜水艦を輸出しているほどだが、電池不良で数日しか潜水出来ず、スクリュー音が基準値を超える騒音を出すなどクレームが絶えない。いずれにしても今回の事故で、韓国側の改修技術のずさんさに調査のメスが入ることになろう。
「そうりゅう型」に見られる優秀な日本の潜水艦は世界の海軍所有国からは垂涎の的で、オーストラリアなども導入を持ちかけたが実現しない。理由は、日本は「専守防衛」に縛られていて、敵基地攻撃はできない。自衛隊を認める憲法改正もできない。武器輸出などもってのほかである。その間隙をいいことに韓国は潜水艦輸出まで大手を振って商売しているのが現実なのである。
インドネシアの悲劇には同情と見舞いの言葉しかないが、これを機に、少しは日本の安全保障を考えてみるきっかけにすべきであろう。