コロナ禍で売り上げが減った中小企業の関係者を装い、国の「家賃支援給付金」をだまし取ったとして、経済産業省のキャリア官僚2人が25日、詐欺容疑で警視庁に逮捕された。
自分たちが管轄する経産省の給付金制度を悪用した、まれに見る悪質なキャリアの犯罪である。
逮捕されたのは、同省経済産業政策局産業資金課の係長、桜井真(28)=東京都千代田区一番町=と、同局産業組織課の職員、新井雄太郎(28)=東京都文京区向丘1丁目=の2人。二人は慶応高校の同級生で、桜井容疑者が2018年入省、新井容疑者が20年入省。
逮捕された経産省の桜井真容疑者(左)と新井雄太郎容疑者(SNSより)
二人とも堂々たるキャリア官僚だが、だまし取った家賃支援給付金の管轄は経産省中小企業庁。つまり自分たちの「職場」で堂々と詐欺を働いたというのだ。
2人は慶応高校時代の同級生で、桜井容疑者は慶応大学からメガバンクに就職したが、退職し、経産省に2018年入省した。新井容疑者は慶応大学から東京大学のロースクールに進学し司法試験に合格し、20年に同省に入省した。
捜査2課によると、19年11月二人の頭文字からとったと見られる「新桜商事株式会社」を設立。コロナ禍で売り上げが大幅に減った中小企業の関係者を装い、専用サイトから偽の賃貸契約書の画像データなどを提出するなどして給付金を申請し、今年1月上旬ごろに約550万円を詐取した疑いがある。新井容疑者が申請し、給付金の大半は桜井容疑者が受け取っていたとみられる。
同課は「桜井容疑者は高級外車2台を所有している上、1か月分の給料に相当する約50万円の家賃の千代田区一番町のタワーマンション14階に住み、派手な生活をしているという情報で捜査を始めた。
新井容疑者の東京都文京区の自宅と親族宅と桜井容疑者の神奈川県の実家の計3か所へ月々200万円の家賃を支払っているというニセの賃貸借契約書を作成し、給付金をだまし取ったという。
申告書、添付書類などは新井容疑者が大半を作成したようだ。一方、カネを派手に使っていたのは、桜井容疑者で、高級時計や外車を購入していた」(捜査関係者)
桜井容疑者の住んでいた千代田区一番町の分譲タワーマンションは、不動産業者のサイトで見ると、約90平方メートルの物件で2億円近い値段がついている。
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最近、キャリア制度が問題になるが、ブログ子は大学4年まで知らなかった。同級生が当時の「国家公務員試験甲種」をうけるというので初めて知った。現在の「国家公務員総合職」試験である。それ以前は「国家公務員Ⅰ種、Ⅱ種試験」という時代もあった。エリート意識が高い外務省には、独自の「外務公務員採用Ⅰ種試験」というのもあった。雅子皇后陛下などその合格者で、ロンドンの2等書記官時代に「皇太子妃候補」だというので現地取材させたら「名刺を出しなさい」と追いかけられたものである。
ブログ子がそのすさまじい「格差」を目の当たりにしたのは新人記者として配属された三重県警本部だった。県警本部長に次ぐナンバー2は警務部長だが、新しく東京から新任が来たというので近鉄津駅頭に見に行った。県警ブラスバンドの演奏下、身重(初めての子供)の夫人を伴って降りてきたのは警察庁からの28か29歳だったかのキャリアで、最敬礼で迎えたのは間もなく定年という叩き上げの刑事部長だった。刑事部長からは「いい嫁さんを世話するがどうか」と言われていたが、なんだか気の毒になった。
先月亡くなった義兄は東大法学部卒のキャリアだった。実家は和歌山で蚊取り線香屋の長男だが家は3男に譲って東京に来た。それがよく言っていたのだが「キャリア試験の成績が二ケタでよくなかったので電電公社に入った」
一ケタだと大蔵省に行けるがそうでなければその他の官庁、義兄の場合、同じキャリア制度をとっていた「三公社五現業」(国鉄や専売公社)に行ったものである。
病気で長期休養をたびたびとっていたが、それで「出世」に影響があったかというと全然。民営化でNTTとなったが支社長やドコモなど子会社を「渡り歩く」こと4度か5度。そのたびに数千万円の退職金をもらっていたものである。
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先述の2人と同じ経産省の職員が25日麹町署に盗撮で逮捕された。4月23日午後5時45分ごろ、衆院2階の女子トイレの個室内にいた女性職員が盗撮に気づき、捜査で経済産業省職員が盗み撮りを認めた。
キャリア制度は大学進学率が0・8%程度の時代の産物である。また官僚にも「志」があった。先頭に立って国のために働くという「気概」もあった。今はどうか、上述のキャリアたちを見てもそんなもの微塵も感じられない。
年々、キャリア試験の受験者が減っているという。大学進学率90%、実力主義が今の趨勢ではもはや「超特急」階級などいらないのである。