プーチンがウクライナに侵攻してあと1週間ほどで1ヶ月になる。全ロシア軍の90%を動員して2週間ほどで一気に勝敗を決するつもりだったのが、とてつもない誤算でもたついた結果、逆にプーチンが窮地に陥っているのが明白になってきた。侵攻は「終わりの始まり」と書いたが、そのとおりになってきた。
衝撃のシーンを見た。ロシア国営の「第1チャンネル」で14日夜、ニュース番組の放送中に、キャスターがニュースを読み上げていたところ、女性が紙を掲げて突然現れ、「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで」などと書かれた紙を持った女性がスタジオに登場する場面があった。
画面はあわてて別の映像に切り替わったが、この場面はしっかりと世界に流れて衝撃が広がった。国営メディアにも反対の声があることがあらわになったからだ。タス通信によると、女性は同チャンネルの編集担当者で、警察署で取り調べを受けている。ウクライナ南部オデッサの出身という。この女性が事前に撮影したとみられる動画では、父親がウクライナ人、母親がロシア人と明かして「今ウクライナで起きていることは犯罪だ」などとウクライナ侵攻を批判していた。
一方、ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は13日までに、プーチン大統領に侵攻前のウクライナ政治情勢を報告していた連邦保安局(FSB)の対外諜報部門トップ、セルゲイ・ベセダ氏が自宅軟禁に置かれたと伝えた。侵攻が計画通りに進まないための「懲罰」だとみられている。
FSBの前身は泣く子も黙る諜報機関KGB(ロシア語でカー・ゲー・ベー)で2004年以降18年間、ウクライナを含む旧ソ連圏での全諜報活動を担ってきたが、ベセダ氏らはプーチン氏を怒らせないように聞きたいことばかりを報告していたが、侵攻開始から約2週間が経過し、プーチン氏がようやく「誤り」に気付いたという。
いまや全世界の90%がウクライナ支持に回っている、ロシアを支持しているのは中国(控えめだが)、ベラルーシ、北朝鮮くらいのものだ。ウクライナ難民は1000万人になるという予測もある。日本も受け入れを決めたが、難民生活もそれほ長くならないで母国に戻ることができるとブログ子は思う。
翻って、毎日放送されるテレビのワイドショーのお気楽なことはどうしたものか。さっきまでコロナを「解説」していたコメンテーターが手を返して「ウクライナ」を語るというのはあまりにひどかろう。
難民の窮状にお涙頂戴式のコメントは要らない。クラウゼヴィッツの「戦争論」を読んでからコメントしろとまでは過大要求しないが、口喧嘩の末、戦争状態になった今は双方の軍事力や武器知識などに通じた軍事記者や参謀関係にいた防衛省OB、単なる軍事オタクでない軍事評論家に出番を回してもらいたい。
クラウゼヴィッツは2世紀も以前の人だがブログ子が覚えているのは「戦争は契約である」という一言だ。外交で決着できなくて戦争になった場合、負けた方は勝者側の要求を呑むとい「契約」であるというものだ。「戦争とは政治の継続である」というのもある。
メデイアは「侵攻」と表現しているが、ロシアがとっている戦術は、クラウゼヴィッツの言うところの「侵略」である。侵略とは、占領と異なり、その領域を長く保持する意図はなく、単に疲弊させることを目的として行われる。ザポリッジャ原発の占拠もその一つである。重要インフラを押さえ、主要都市を押さえ、そして首都を押さえることで、ウクライナ政府や国民の抵抗を抑え、戦意を喪失させようとしているわけである
長くなるので止めるが、戦争の勝敗は外的要因と内的要因で決着するものだが、上で紹介した片々としたニュースではあるが、ロシア敗北への一歩であると、ブログ子は考える。
この項をアップしてから、彼女の名前はマリーナ・オフシャンニコワさんといい、事前に用意していたビデオメッセージの内容がわかった。
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今ウクライナで起きていることは犯罪だ。そしてロシアは侵略国家だ。その侵略の責任は、プーチン大統領にある。私の父はウクライナ人で、母はロシア人だ。これまで一度も敵対したことはない。(ロシアとウクライナの国旗の色があしらわれた)私の首にかかるネックレスは、ロシアが今すぐに、同胞を殺す戦争を止めねばならないという象徴だ。私たち兄弟国は、まだ和解ができるはずだ。
残念ながら、私は過去何年もの間「第1チャンネル」で働き、クレムリンのプロパガンダを広めてきた。今は、それを本当に恥ずかしいと思っている。テレビ画面を通じ、ウソを伝えることを許してきたことを恥じている。国民を、何も考えないようにすることを許してきたことを恥じている。
すべてが始まった2014年、私たちはただ黙っていた。クレムリンがナワリヌイ氏を毒殺しかけたとき、私たちは抗議集会に行かなかった。この非人間的な政権をただ黙って見ていた。
そして今、世界中が私たちに背を向けてしまった。私たちの子孫は今後10世代にわたり、この兄弟殺しの戦争の恥を洗い流すことはできないだろう。
私たちロシア人は思考力があり、賢い。私たちの力だけが、この暴挙を止めることができる。抗議集会に参加してほしい。何も問題はない。彼らは私たち全員を拘束することなどできないのだから。