プーチンのウクライナ侵攻から2か月の4月24日、ウクライナ陸軍が最新統計を出した。戦争では互いに敵の損害を多めに出すものであるが、これまでのロシア側発表はまるでデタラメであることを考慮すると、ウクライナ側発表は信憑性は高いと考えられる。
それによると(画像は英国「デイリー・メイル」紙から)、兵員の死者は21,800人 戦車873両、航空機179機、大砲(牽引式と自走式)408基、ヘリコプター179機、、装甲車2,238両、地対空ミサイル69基、多頭ロケット発射システム147基、兵員輸送車両1557両、無人航空機191機、輸送車76両 軍艦8隻。
「損耗率25%」という試算もある。20%を超えると普通、軍隊としては「負け」である。
いずれにしても甚大な損害である。2月24日の時点で、ロシアの陸軍は28万人ウクライナは12万5600人だった。2週間で制圧という目論見だったようだがあてが外れ、3月下旬にはキエフ近郊から撤退を余儀なくされ、ドンバス東部での攻勢に力を入れざるを得なくなった。
総司令官も任命せず、普通は林に隠れながら進軍するのに戦車を一列縦隊で進ませて米軍貸与の対戦車砲ジャベリンの格好の餌食になった。送られてくる路肩に擱座したおびただしい数の戦車のスクラップを見ると拙劣な攻撃ぶりは明白である。ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」はウクライナ自前の地対艦ミサイル「ネプチューン」2発で海の藻屑となった。
ウクライナ海軍は10年前の露軍のクリミア半島侵攻でセヴァストポリ軍港から追い出されオデッサ軍港に押し込められていたが、すべての艦船を入り口に自沈させた。自軍も出られないが、ロシア軍も揚陸艦から兵隊を上陸させられない作戦である。「ネプチューン」の射程距離2キロ以内にノコノコと旗艦を進めたミスは明らかで、今頃になって黒海艦隊司令官を逮捕したところで追いつかない。
専門家によれば、この戦争は「第2段階」に入った。すなわちロシアがドネツクとルハンスクのドンバス地域の領土を奪取し、南部のマリウポリを廃墟にしてもこれまで海路でしかクリミアのセヴァストポリ軍港に兵站路がなかったものを、陸路でつなげようとする試みだ。いずれ停戦交渉に入るだろうが、そのとき、両軍の占領地図を基に交渉されるのが戦争の基本だからだ。
しかし、これは容易ではない。たしかにマリウポリ市街は破壊されているが、最後は陸上部隊が入るしかない。今のように、親露地区からロケットで攻撃するだけでは容易に陥ちるものではない。ロシア軍は当初ウクライナ全土の掌握を目指していたがもはやその意図は無理筋だ。なぜなら専門家の見るところ「ウクライナ全土を掌握し全人口を支配するために必要なロシア兵の数は100万人近くになる」(キングス・カレッジ・ロンドン戦争学部のマイケル・クラーク客員教授)。キーウを撤退した今、ロシア軍にできる最善の策は親露地区の独立とクリミア半島への南部の兵站ルートを確保することである。
侵攻2か月での甚大な損耗は何を物語るか。
プーチンの「終わりの始まり」と言われるが、問題はその「終わり方」である。プーチンはソ連時代の秘密警察「KGB」(カー・ゲー・ベー)出身のスパイである。ところがロシア軍より上に位置するその親衛隊と最近ミゾが深まっているという。何十人か粛清されたという噂もある。先月、ロシア軍幹部と「異常に長いテーブル」を挟んで会談している写真があった。「コロナ対策」というのが公式の発表だったが、あれは暗殺を恐れてのことだという説が出回った。警備の厳重なクレムリンでもし持ち込めるとしても拳銃が精一杯である。20メートルも離れていては拳銃の弾はたいていそれるという。
暗殺はロシアの常套手段である。反プーチンで毒殺されかけた反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(45)は、「ロシアは臆病者の国であるべきではない。狂った皇帝をひきずり下ろすため、すべての人々に街頭に出て、平和のために闘うよう要請する」と獄中から呼びかけているが、この戦争を止める最良の方策はプーチンを大統領の座から追い出すことである。
もう一つの方策は病気である。先日、ジョイグ国防相とのサシの会談が公開されたが、その動画では異常な仕草から病気、パーキンソン病の進行が指摘されている。
露大統領府が公表した約12分間の動画では、プーチンはショイグと着席で会談を始めた直後から、右手でテーブルの端を(白く見えるほど)強く握り、最後まで離すことはほとんどなかった。また足を小刻みに揺らしていた。一方、ショイグ国防相も心臓発作を起こしたあともあまり調子が良くないようで、言葉にハリがなくひたすrらメモを読み上げるばかり。ビデオを見た専門家も「プーチンとショイグ双方とも『落ち込んでいて、健康状態が悪そうだ』」と述べている。
この場でプーチンは「ロシアはマリウポルを解放したと主張し、ジョイグに対し反抗的なウクライナ人が立てこもるアゾフスタン製鉄所を、ハエ一匹通れないように封鎖するよう」猛烈に命令していた。言葉は激烈だが、映像からはプーチンの姿勢の悪さ、明らかに肥大化した顔と首について、最近低下しているとされる彼の健康について憶測を呼んだ。
テキサス工科大学のボディランゲージ専門家、エリック・ビュシー教授はサン・オンラインに、「数年前にも観察したプーチンと比べると、驚くほど弱体化している。健常な大統領なら、テコのために手を差し出して体を支えている必要はなく、両足を地面につけていることに気を使うこともないだろう。小さな会議テーブルでかろうじて直立しているように見えるプーチンの肖像だ」という。
プーチンの膨れた顔と首は、ステロイド治療を受けているという観測を裏付ける。プーチンは甲状腺癌を専門とする医師と「常に」一緒にいるとの報道もある。モスクワの中央臨床病院の外科医エフゲニー・セリバノフは、黒海のリゾート地ソチにいるロシアの指導者のもとへ35回以上も飛行機で訪れている。セリバノフ医師には、「高齢者甲状腺癌の診断と外科的治療の特殊性」という論文がある。
英国の元国会議員はSNSで「プーチン氏はパーキンソン病を患っている。テーブルを握っていたのは右手の震えを抑えようとしていたからだ」との見方を示した。
露独立系メディア「プロエクト」は1日、プーチン氏が甲状腺の病気を抱えている可能性を報じた。体調悪化がウクライナ侵攻を巡る判断に影響しているとの見方もある。
ロシア軍の士気の低さ、兵器の常識を超える損耗率、秘密警察への粛清、艦隊司令長官の拘束‥この戦争は今後数ヶ月から数年続くとの見方が出ている。しかし、ブログ子はロシアの内部崩壊に期待する。