前回、ロシアの最新鋭戦車が配備直後に破壊された事を報じたが、今度は東部戦線で戦車の渡河作戦をウクライナ側に見抜かれ集中攻撃を受けて戦車、軍用車両など52両という大隊規模が壊滅したことが判明した。ウクライナ側の損害はほぼゼロで、とても世界第2位の軍事大国とは思えないロシア軍の拙劣な作戦ぶりである。
キーウ付近の北方から侵攻したロシア軍はブチャなどで大虐殺を働いたが、ウクライナ軍の善戦で押し戻され、敗軍を再編成して現在は東部方面から再攻撃している。ロシア軍は5月8日、リシチャンスクとその姉妹都市セベロドネツクを大きく包囲しようと進軍してきた。
だが、ウクライナ側は見抜いていた。ウクライナの軍事技術者を名乗る「マキシム」氏がツイッターに一部始終を投稿したところでは、5月7日にロシアが川を渡ろうとする可能性が最も高い場所を特定し待ち構えていた。ロシア軍は得意とする「ポンツーン橋」を架けるだろうが、その合図は仮橋を運ぶタグボートのエンジン音が確実なサインだ、と現場に指示を出していた。
「ポンツーン橋」というのは右の動画で示したように、折りたたんだ形で架橋を運び現場であっという間に展開させて戦車を渡すための仮橋をつくるものだ。
5月8日の朝、タグボートのエンジン音が聞こえてきた、同時にロシアは近くの畑を焼き、発煙弾を投げて川を煙幕で覆ったあと進軍してきた。ウクライナ軍はドローンを使って大隊を発見した後、壊滅的な砲撃が命じられた。
ツイッターの「マキシム」氏によると「偵察部隊がロシアの橋の架設を確認してからおよそ20分後、重砲がロシア軍に一斉射撃し、その後、航空隊も参戦した」。
渡河作戦中にウクライナ軍に強襲され壊滅した現場
橋は崩壊した。渡り終えていた10数両は川のウクライナ側で身動きが取れなくなり、戻ることもできなくなった。ロシア軍のおよそ30から50台の戦車や兵員輸送車両、軍用車両はウクライナ軍の攻撃で混乱、なすがままに破壊された。5月9日の朝に撮影された衛星画像では、ウクライナのドネツ川近くはロシア軍の「戦車の墓場」と化していた。大隊規模のロシア軍が全滅したとみられる。この戦闘で、未確認だが1500人のロシア兵が死んだという。
川の片側には少なくとも3台のロシア製戦車と4台の装甲歩兵車両の残骸があり、その他の残骸も水面下に突き出ている。
ゼレンスキー大統領は、「占領者は徐々に押しやられている。侵略者の軍隊を追い出すために、戦線を維持し、本当に超人的な力を発揮しているすべての人々に感謝する」。
それにしてもロシア軍の「劣化」ぶりはひどいものだ。ロシア兵による民間人殺害、強盗、強姦‥は伝統的なもので、一方的に日ソ不可侵条約を破って満州と樺太に侵攻、武装放棄していた日本兵と現地に残っていた民間の日本人を殺し、60万人の日本兵をシベリアで使役した過去とそっくりである。
ロシアという国の残虐性を日本人は知っているが、世界は無知で中国やアフリカなど「世界人口の半分」はまだロシアに肩入れしている。ロシアは世界第2位の軍事大国ではあるが、GDPでは15位くらいで韓国とイタリアの間に位置する。こうした拙劣で士気も低い軍隊を世界が見ることで、グロムイコ外相が拒否権を振り回し「ミスター・ニエット」と呼ばれたくらい、国連を舞台に暴虐に振る舞ったこの国が、「それ相当」の地位に収まることを願う。