プーチンの終わりが近づいた

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア軍が支配していたウクライナ東部ドネツク州の要衝リマン(地図ではイジュームの少し南東部)について「完全に敵を排除した」と述べ奪還したことを明らかにした。ロシア国防省も「包囲される脅威がある」として部隊をリマンから撤退させたと発表した。

リマンは交通の拠点で、ここを抑えたことで東部ルガンスク州西部の人口約9万人のリシチャンスクを奪還できる可能性が高まった。

そればかりでなく、ウクライナ軍参謀本部によると、。南部ドネツク州ではバフムートとマイオルスク(地図では南部の青色のあたり)の重要地域でロシアの進軍を阻止し過去1日で20以上の町や村を奪還した。ロシア軍が制圧した地域のロシア側の責任者もウクライナ軍が前線を突破したことを認めている。

8か月前ロシアが侵攻したときは首都キーウ周辺を含めウクライナの大半を掌握していたから、その時と比べると「半減」あるいはそれ以上の面積を失ったことになる。

そればかりでなく、ロシアが不凍港セバストポリをどうしても確保したいがためクリミア半島を一方的に併合したものの、地対艦ミサイルで黒海艦隊の旗艦「モスクワ」(巡洋艦)があっという間に撃沈された。セバストポリを母港にしていたキロ級攻撃潜水艦隊もウクライナの射程内に入ったためやむなく黒海を出てをロシア南部に帰った。いまは中型の戦艦3,4隻が塩漬けになっているだけ。

明らかに戦況は劣勢に立たされている。9月21日、プーチン大統領は、予備役の部分的動員令を発表したが、これがとんだデタラメで、兵役経験のない60歳代の男性を召集したり、サイレンを鳴らして驚いて出てきた男に召集令状を渡したり。周辺国には召集逃れのためクルマで脱出をはかる長い車列ができた。召集適齢期の脱出者は20万人を超えたという。プーチンは30万人の兵員を確保する目的だったが、ほぼ大半が「逃亡」したわけだ。召集者は少数民族ばかりという話も伝わっている。首都モスクワやサンクトペテルブルクを中心にロシア各地で大規模な抗議デモが起きている。

プーチン大統領はウクライナ東・南部4州の占領地のロシア併合を決め、「ロシアは私たちの兄弟姉妹に故郷の扉を開くだけでなく、心を開く。おかえり!」と語り掛けたものの、その併合領土はじわりじわりと蚕食されているわけで、劣勢は覆うべくもない。欧米のメディアでは「プーチン敗戦」の論調も目立つようになった。

ブログ子もそれに近い観測だ。ロシアがせっかく併合した東部4州だが年内にでもウクライナ領から押し出されるのではないか。こうしたウクライナ側の大反撃が出来た背景には「ハルキウ奪還作戦」の成功が大きい。後日、戦史に残るであろう「敵陣突破」について触れておこう。

たった5日間の攻防で戦争の流れを変えたこの戦いの流れはこうだ。

①9月6日、ウクライナ軍は、まずイジュームの南部を攻撃した。

②9月7日、ウクライナ軍は、ハルキウ方面から包囲攻撃(敵の正面から攻撃するのではなく、敵の側背から攻撃して退路の遮断を狙うもの)を行った。ロシア軍はウクライナの攻撃主力がハルキウからなのかジューム方面からなのかわからなくなった。

③9月9日、ウクライナ軍は、ハルキウ正面から戦果を拡張し、ロシア軍が重要拠点としていたイジュームの背後に回り込んだ。

④9月10日、ウクライナ軍はイジュームへの後方連絡線を遮断。

⑤9月11日、ロシア軍イジューム守備部隊は、背後と後方連絡線に脅威を感じたために後方に逃走。ウクライナ軍は一挙にイジュームとロシアとの国境線まで進出した。

こうした作戦成功の鍵となったのは事前に「シェーピングオペレーション」が行われていたことだとアメリカの戦争研究所(ISW)は分析する。ISWはウクライナの戦況をリアルタイムで分析してホームページで公開しているところで世界中のメディアで「戦況」として掲載される地図はすべてここが作成したもので、ブログ子もここのHPをよく参照している。

 シェーピングオペレーションとは、本格的な攻撃前に実施される軍事行動で、指揮統制、弾薬庫などの敵への攻撃だけでなく、地形を変えたり、第三者に働きかけることにより、計画された進攻に備え戦場を形作る(shaping)ことをいう。

このほか戦車部隊を集中的に破壊して機動力を奪っていたことや、西側供与のハイマースなど新鋭兵器が効果をあげたこともある。なにより、ロシア軍の戦意が著しく低く、すぐ逃亡をはかったなど要因はいくつかあろう。

プーチンが命じた「一部動員令」は30万人の兵力を補充するというのが名目だが、実は100万人を集める総動員令に近いものだったとするロシア国内の報道がある。しかし前述の通りでたらめぶりでそれどころか兵役逃れの国外脱出者がすでに20万人に達している。だれが見てもプーチンの敗色は濃厚である。

独裁者の最後はいずれも無惨である。チャウシェスクのように射殺されるかムッソリーニのように民衆になぶり殺しにされるか。ヒットラーのように毒をあおるか‥。それに比べると日本には「切腹」という「きれいな」始末の付け方があるのだが、あの傲慢なプーチンには届きそうにもないのが残念だ。

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