爆殺の瞬間まで動画で流れる元KGB同士の戦い

ロシア第2の都市サンクトペテルブルクのカフェで2日午後、、親プーチン政権派の著名軍事ブロガー、「ブラドレン・タタルスキー」(本名マクシム・フォミン)が爆殺された。

タタルスキーは、通信アプリ「テレグラム」でロシアによるウクライナ侵略の経過を報告していた。インタファクス通信によると、露治安当局は同日、爆発物を使って殺害した疑いで、同市在住の20代の女、ダリア・トレポワ容疑者=写真右=を拘束した。

露メディアの報道によると、カフェでは当時、支持者らが交流するイベントが開かれていた。トレポワ容疑者が持ち込んだ贈り物が爆発したとみられる。爆発で少なくとも30人が重軽傷を負った。トレポワ容疑者には昨年、反戦デモに参加して拘束された過去があるという。

露外務省のザハロワ報道官は、殺害にウクライナ側が関与した可能性を示唆。一方、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は「ロシア内部の闘争だ」とし、関与を否定した。

露経済紙コメルサントによると、タタルスキーはウクライナ東部ドネツク州で1982年に生まれ、2011年、銀行強盗の罪で服役。14年に勃発したウクライナ東部紛争に際して刑務所から脱走し、親露派武装勢力側で戦闘に参加した。後に恩赦を受け、露国内に移住。昨年2月に始まったウクライナ侵略でも親露派武装勢力の部隊に参加したほか、テレグラムなどで前線の戦況などを発信し、56万人以上のフォロワーを獲得「全員を殺し、全てを奪う」など過激な発言も行っていた。

露国内では昨年8月、露民族派思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘、ダリアさんの運転する車が爆発し、ダリアさんが死亡している。このときも露治安機関「連邦保安局」(FSB)は、ウクライナの情報機関が主導したテロ事件だと主張、一方、ウクライナ側は関与を否定した。

◇ ◇ ◇
FSBはソ連時代の秘密警察機関であり対外諜報機関であるKGB(カーゲーベー)の後継機関である。このときはウクライナもKGBの最有力の構成員だった。両国が敵対関係になって、ウクライナの側の要員はウクライナ保安局(SBU)となった。いわば元KGB同士で、「007」ジェームス・ボンドを上回る諜報、暗殺のプロである。

その後ロシア側のFSBは反プーチン派を何人か暗殺しているが、多くは有毒物質や化学物質が使われている。ノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者は2004年、機内で出された紅茶を飲んで意識不明の重体になった。2006年にロシアの元スパイのアレクサンドル・リトビネンコ氏は亡命先のロンドンで飲んだ緑茶に猛毒の放射性物質「ポロニウム210」が混入されており、3週間後に死亡した。

動画ではタタルスキーがこのイベントで金色の自分の彫像を贈られる場面が写っているが、この彫像の腕の部分に200グラムのTNT爆薬が仕込まれていたと思われる。受け取ってすぐ爆発したが、即死したのはタタルスキー本人だけで女性は無事だったことから、無線操縦で外部の人間が起爆させた可能性も指摘されている。

こんな事ができるのはプロの仕業以外に考えられない。ロシア側が言う通りウクライナ側の犯行としたら、「お主もようやるのう」である。

コメントは受け付けていません。