職業に貴賎あり (その2)

「職業に貴賎なしというのはウソである」と喝破したのは山本夏彦翁である。「職業に貴賤あり」とのタイトルで以前このブログで書いた(http://h-h-a.org/miyazaki/?p=3379)ので「その2」としたが、今回書く賎業は新宿歌舞伎町などにはびこるホストクラブとそれに銜え込まれて売春に身を落とす若い女性たちである。

ルポを読むと、「歌舞伎町の大久保公園周辺では、女性たちが片隅に立って並んでいる。座っている人もいれば、外国人女性の姿もある。男が『条件は?』というと、女が数字を告げる。そのまま二人はどこかへ消えていく」とある。ブログ子はこのあたりに行きつけの焼き肉店があったので知っているが、その頃は普通の公園だった。大久保公園に多くの女性“立ちんぼ”が目立つようになったのは、コロナ禍が始まった頃だという。

先月一か月で警視庁が検挙した“立ちんぼ”は数十人に上る。異常な数である。しかも、こうしたのは東京だけでなく大阪・キタの兎我野・太融寺周辺の「アメリカン通り」でも大勢の“立ちんぼ”が見られるという。ここもブログ子はよく知っている。20代の社会部記者時代、クリスマスイブに、タクシー汚職で逮捕まじかの代議士が泊るホテルの下で、一晩中見張ったところだ。

身を落とす多くはホストクラブで多額の「売掛金」を抱えて、その返済のため身を売るようになった女性だ。ホストクラブなどというところに行けばどうなるかくらいの分別がつかないのか。不思議に思いホストクラブ経営の男性「G」氏の対談を読んでみたら、なるほど、巧妙な仕組みがあるようだ。

以下、そのホストクラブのベテランの見立てである。
 ──ホストにハマる女性たちは、俗に「ホス狂い」などとも呼ばれます。どのような女性がホストにハマっていくのでしょうか? 

G氏 : どちらかというと豊かな家庭から出てきた女性が多いですね。一人暮らし、地方の出身、ちょっとメンタルが弱く、一生懸命勉強してきたような、男性経験が少ない女性です。親もしっかりしていて、大学や大きな会社への就職が決まり東京に出てきた。そういう真面目な女性が引っかかる。地方出身が圧倒的に多く、全体の8割以上。

 ──女性たちはどのようにしてホストにハマり、売掛金を増やしていくのでしょうか? 

G氏 : ホストは巧みな恋愛詐欺商法を使います。まず、SNSなどを通じてターゲットを引き付け、自分たちが配信しているものにリツイートやハートを付けたりしたら、『1回会いませんか』とメッセージを送り、巧みな話しぶりで3000円の体験入店まで持っていく。女の子が初来店した段階で「この娘ならあそこに売れる」「このくらい稼げそうだ」という想定まで立てる。『この娘はキャバ(キャバクラ)』『この娘はデリヘル(デリバリー・ヘルス)』なんて考えながら値踏みをする。

 初日は、体験入店でいい気分にさせてLINEを交換するぐらいで十分です。「今日は運命の出会いだったね」などとメッセージを送り、翌日の「おはよう」から始まって、日に100回くらいメッセージを送っていく。女の子からしたらかっこいい男の子から優しいお姫様扱いをしてもらえるので気持ちがいい。

 2回目の来店では3万円使い、「やっぱり私この人が好きだ」と女性は実感する。ホストはこの段階で女性客をホテルに連れて行き、体の関係を持ちます。まず惚れさせる。これが常套手段です。よく売れそうな娘を仕込んでいくのです。3回目の来店では、ボトルを入れて、30万円くらいポロっと出してしまう。

 ──二十歳の女の子が、その段階で30万円出せるのですか? 

G氏: 支払いは後払いです。30万円でも、300万円でも、後払いだから出せる気になってしまう。これが売掛です。実際は「後から体を売って返してもらう」という構造です。男と女の関係になっているからどうしても会いたくてまた店に来てしまう。「今日は手持ちだけでいいよ」「後はツケで」「君は俺の女だから」などと言葉を並べる。

 この段階になると、もはや外から口を差し挟むことはまずできません。マインドコントロールです。ホストには店の先輩が洗脳ノウハウを教え込むし、マニュアル本の存在もあります。みな訓練してやっていることです。

 ──ホストクラブに一度でも行くことが危険ということですか? 

 G氏: そうです。ホストクラブはハイエナ集団です。全部やられますよ。貢がせる金額は、以前は1000万円や2000万円というレベルでしたが、最近はその額が上がり、9000万円あまり貢いでいるケースも。8年くらい貢いだ人もいるし、2年間くらい海外で売春をして稼いでくる女性もいます。
◇ ◇ ◇

さすがに国会でも規制の動きが出てきた。塩村文夏参院議員を中心に、ホストにハマっている娘を持つ親などから窮状をヒアリングしてきた立憲民主党は、国や自治体に相談体制の整備などを求める法案の骨子をまとめ、今国会への「悪質ホスト対策法案」提出した。

「この案は、売春防止法や消費者契約法など現行法の範囲内で取り組みを進めるもので、問題の根底にある『売掛金』規制にまでは踏み込めなかった。ホストクラブだけを狙い撃ちにして売掛金を規制するのは法の下の平等に反する、という根強い批判があるためです。問題の認知を広めることに目的を置いた法案で、実効性に乏しい内容になってしまった」(政治部記者)

東京都新宿区は歌舞伎町の主要ホストクラブの代表者らと会合を開き、ホストクラブ側が4月までに売掛金による支払いを廃止する方針を明らかにした。客への売掛金をホスト個人に肩代わりさせる慣習もなくすという。

区内のホストクラブ約300店舗のうち歌舞伎町の約220店舗が加盟するホストクラブ18グループが参加。会合では、来年4月までに売掛金をなくす、高額な支払いをするために過酷な勤務をあっせんする反社会勢力との関係を断絶するなどを約束した、と新聞記事にある。新宿区だけでホストクラブが300もあること自体異常である。

ブログ子に言わせればいずれも「やってる感」を見せるだけのまやかしだ。土台、女をダシに食ってる連中が飯のタネを簡単に手放すものか、誰にでもわかる茶番である。

冒頭に紹介した山本夏彦はこうも言っている。「私は衣食に窮したら、何を売っても許されると思うものである。女なら淫売し ても許される。ただ、正義と良心だけは売り物にしてはいけない」

はっきり言うが、これは賎業である。賎業には賎業の対処法がある。誰が何と言おうとホストクラブなどというものを抹殺することである。

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