「トクホ」も「機能性食品」もマヤカシである

 小林製薬(大阪市)による紅麹(べにこうじ)問題が収まる気配がない。それはそうだろう。よかれと思って摂取したものが逆に作用するとは誰も思ってもいなかっただろうから。家内の実家が神戸の酒造業界だったのと、家業を継いだ義弟が発酵学を専攻してしていたので、少しこの分野がわかるで言うのだが、これを機会に「機能性食品」と「特定保健用食品」(トクホ)について、考え直した方がよいと思う。

 小林製薬の機能性表示食品の紅麴サプリメントを摂取した後に健康被害が相次いだ問題で、厚生労働省は5月28日、健康被害のあった原料から検出されていた青カビ由来の「プベルル酸」が、腎臓の尿細管の壊死を引き起こす作用があることを動物実験で確認したと公表した。原料を作る前の段階にあたる紅麴菌の培養過程で、工場内の青カビが混入したとみている。

健康被害を調査している日本腎臓学会によると、多くの患者で腎臓の中にある尿細管がダメージを受けることで起こる「ファンコニー症候群」を疑う症状や検査結果がみられている。健康被害は、延べ相談件数が12万1000件、医療機関を受診した人が1603人、入院した人278人、死者数5人。

紅麹サプリメントは機能性表示食品である。消費者は、容器包装の「悪玉コレステロールを下げる」という機能性に惹きつけられて購入した。それがまるで逆の恐ろしい結果を突き付けられたのだから、罪深い。こんなとんでもない効能をうたって市場に出回っている「機能性表示食品」制度への批判も高まっている。

別名、「脅迫産業」という「機能性表示食品」の宣伝は日々TV・ラジオ・新聞・雑誌等にあふれている。この原稿を書いている横のテレビでサントリーの「ロコモア」の宣伝が流れている。ひざが痛く歩けなかった人が、商品を摂取したことにより、すいすい走り始めたなどと、体験談から入るのが、この商法の常套手段だ。

「機能性表示食品」というあやふやな制度は2015年(平成27年)に創設された。それまで必須だった厚労省への申請と同省の審査・許可が不要となり、消費者庁への自社等試験等を添付する届出だけで商品の製造販売が可能となった。国の審査が必要なく、企業が勝手にその効果を謳っていいというのだから、やりたい放題になるのは目に見えていた。

「機能性食品」のほかに、もう少し「権威」があるとされる「特定保健用食品」(トクホ)がある。その有効性、安全性などの科学的根拠を示して、国の審査のもとに消費者庁の許可を受けた食品である。消費者庁の審査を経た製品であり、許可された範囲内で保健効果を記載できる。「トクホである」ことはヒトを対象に行った実験研究において、ある成果が得られたと消費者庁がお墨付けを与えている食品だ。

ところがこれも抜け穴だらけである。たとえば、食後の血糖値の上昇を数ミリグラム抑制する保健効果をもつというデータがあるトクホがあったとする。「これを食べることが将来的に糖尿病の予防につながるか否か」はまったく別問題なのだが、トクホなら半ば「薬効証明」があったかの如く宣伝できるのである。トクホは、医薬品ではなく食品なのだが、あたかも「クスリ」であるかのように宣伝している。

こんなあやふやな「機能性表示食品」と「特定保健用食品」(トクホ)がそろって消費者庁のさじ加減一つで世の中にまかり通っているのである。「目の調子を整える」「睡眠の質の向上」「疲労感の軽減」などの表現は、トクホでは認められていないが「機能性表示食品」なら堂々とまかり通っている。

「内臓脂肪を減らす」と機能性表示するヨーグルトの広告は、内臓脂肪面積の減少を図で示していながら、体脂肪率が増加したことには言及していない。正直に書くなら「内臓脂肪面積は減りました。でも、体脂肪率は増えました」と書かねばならないのだ。

サントリーは洋酒、ビール業界の雄だが、決算報告書を見ると実は「トクホ」の売り上げが大きな部分を占めている。昨今の騒ぎでサントリーの決算にも影響を及ぼしている。これまで健康志向を追い風に市場は伸びてきたのだが、トクホよりも安価な機能性表示食品などが登場し、客を奪われていたところに、今回の紅麹問題である。

ブログ子は今回の騒ぎはいい傾向だと思っている。小林製薬という会社の虚構があぶり出されたことが一つ。一族は芦屋の中でもさらに高級な六麓荘に豪邸を構えて、名前に製薬会社を気取っているが、新薬開発に必要な「クスリ」は皆無でトイレの「消臭元」「熱さまシート」などいわゆるアイデア商品ばかりのクスリ屋である実態が暴かれたこと。

そして上で縷々書いた「機能性表示食品」と「特定保健用食品」(トクホ)のまやかしが暴かれたことである。昔からこの両者の製品など買ったことがない。こればかりでなく、テレビショッピングものにも一切手を出したことなどないのだが、家人はよくひっかかっている。女子と小人とは養い難し。

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