フジテレビ本社22階のホールで27日夕から28日未明まで行われた史上まれにみるフルオープンの「10時間会見」。結論を先に書くが、こんな会見ならせいぜい2時間で充分。ろくでもない下司「記者」は最初から排除した方がよい。
芸能界を引退したジャニーズの中居正広(52)と女性とのトラブルにフジテレビ社員の関与が報じられた問題で、今回に先立つ17日に開かれた会見が時間限定で、質問が許されたのは全国紙やスポーツ紙が加盟する「ラジオ・テレビ記者会」所属の記者のみだった。NHKや民放各局の記者はオブザーバー参加にとどまり、質問は許されなかった、それがけしからんというので開かれたのがこの日の会見だった。
時間制限なし、フリーの記者も全員OK、と言うのだから、はじめからフジテレビ側は白旗を上げているようなものでサンドバック状態覚悟だったろう。集まったのは専門紙やインターネットチャンネル記者、フリー記者らを含め191媒体計437人。ブログ子の経験ではこんな「大記者会見」など見たことがない。これでは統制などとれるものではなかろう。
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戦いすんで…まともな記者は姿を消し、残るは・・午前1時の記者会見の様子
はたして、しょっぱなから荒れた。司会者から、女性の特定につながる情報が出れば、進行役が質問を打ち切ると話があると、「それじゃ質問できないじゃないか」と怒号が飛ぶ。会場は5つほどの区画に分けられ、順番に質問者が選ばれる方式だったが、選ぶエリアを進行役が間違えると「次はこっちだろ」とがなり立てる。質問者と言うのが、またひどいもので、「フジテレビは会社ぐるみで性上納をする会社」と決めつけ、壇上のフジテレビ幹部に向かって「使い走りに話したってしょうがない」と暴言を口にする者もいた。

それでも「負い目」を抱えるフジテレビ側は平身低頭で、暴言そのものの質問にも反論しなかったから、さすます図に乗る。質問者以外の不規則発言も相次ぎ、質問者なのに延々と、自分の主張、感想、鬱憤を経営陣にぶつけるだけの者もいた。進行役の同局社員が「質問を簡潔に」と促すと、にらみつけるような視線を向ける始末。
ある者は「なぜ日本雑誌協会には会見の取材案内が来ていないのか」と”質問”というより、詰問に終始。進行役は案内を出していないことを認めた上で「不手際だった」と陳謝していたが、これなど事務方のミスの話で、会見場ではなく、裏方で始末をつける話だろう。
落語家の立川志らくが28日「X」で「フジの記者会見、何であんなに記者がブチギレて怒鳴るの?ブチギレていいのは株主と被害者の関係者だ。きちんと質問して真実を引き出すのが記者の仕事だろうが。政治家に対してもあのくらいの勢いでやってみろ。まさに正義の暴走を見せつけられた」と一部の記者たちの姿勢に疑問の声をあげていたが、もっともなことだ。
経営陣の返答に対して、怒号を飛ばすは、マイクを持っていない人間が延々と持論を主張するなど、不規則発言もやたら目立った。今後の参考にしようと見ていた企業側担当者もいるだろうが、これでは、あらかじめ「クローズドな会見」にしようと思ったはずである。

例によって東京新聞の望月衣塑子記者も存在感を発揮していた。このブログで昨年末「メディア・テロの常連たち」で紹介した人物だが、見当違いの質問を続けてマイクを離さないYouTuber、自分の身の上話を延々と語り始めるフリー記者に交じって、「なんで私を当てないの!」「もっとちゃんと答えなさい!」。壇上のフジテレビ幹部を睨みつける”雄姿”も全部を生配信したフジテレビで全国に放送されていたから、さぞかしご満悦だったことだろう。
何よりひどかったのは、彼らが追及したフジテレビの疑惑なるものの前提が崩れていたことを誰も見抜けなかったことだ。この日の記者会見でも何度も大きく取り上げられたが、同局編成幹部のA氏が中居への「性上納」に関与していたという部分だ。週刊文春電子版が、根幹に関わる報道の一部を訂正していたことを、弁護士の橋下徹氏が、同誌が続報以降の記事で「しれっと誤りを上書きしていた」と暴露していた。
昨年12月25日付の第一報の掲載ページに訂正を載せ、事件当日の会食について、「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていた部分を、「X子さんは中居に誘われた」「A氏がセッティングしている会の〝延長〟と認識していた」ことが判明したとし、「お詫びして訂正いたします」としていた。
週刊文春は、。訂正記事は、フジテレビの続報などを掲載している週刊文春電子版のトップページには表示されず、訂正のあった第一報の掲載ページにアクセスしないと閲覧できない仕様になっていた。
フジテレビにとって、中居氏の女性トラブルで編成幹部A氏の直接的な関与があったかどうかは、責任の大きさを左右する決定的な争点となる。27日の会見でも、関与を否定する港浩一社長に一部の記者が詰め寄り、会見場が紛糾する場面があった。偉そうに糾弾しているが、その根底が崩れていることを「勉強もせず」怒鳴っていたのである。
会見では〝トラブル〟で被害を受けたとされる女性Aさんのプライバシー侵害などに配慮。当事者同士の間に起きたことについては言及しない前提だった。テレビ中継やネット配信では、質問者から女性の実名が出た場合は必要な編集を行った上で最低10分遅れでの放送・配信のルールで行われるというルールだった。それでも、女性の本名を挙げて質問するのがいた。ひどいものだ。
「今回のフジテレビの会見で『週刊文春によれば』という形で質問した記者がたくさんいた。自分で取材をせず、『週刊文春によれば』のひと言で済まそうとしている。本来、記者としてあり得ない。ちゃんと取材をしてから臨むべき」(社会学者の古市憲寿氏)。
元NHKの記者だった岩田明子氏も、「私たちは新聞記事を持って、これによればと質問することが恥ずかしいとされていました。自分でちゃんと取材先に当たって、自分で得た感触でしか質問しなかった。このあたりのスキルを高めていくというか、記者の方も構えもしっかりしていかないと」と厳しく指摘した。
国際政治学者の三浦瑠麗氏がXで総括していた。「当事者女性から聞いた話をアウティングする許可を得ていない経営陣に対して、吐け、吐けと責めるショーに見えてしまうけれど、その結果フジテレビに同情が集まってもいい、というのが質問者の判断なのだろうか」
「今後、双方の当事者が積極的に話そうとしていない性に纏わるトラブルについて、憶測でワイドショー番組にできなくなったことだけは確かだと思う。そうした報道は元々放送基準に合うものではなく、週刊誌の領域にしておけばよいというのがわたしの見解です。文春によれば、文春によれば、と連呼してボードに他社報道を切り貼りするテレビ番組が一部でもなくなるとすればよいことだ、とたぶん文春自身が思っている。やるなら自分で取材してやれと」と付け加えた。
至言であろう。