南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島近海で26日、ベトナムの漁船が中国の漁船から体当たりされ、沈没した。ベトナム漁船は中部ダナンから出漁していた。乗っていた漁民10人は別のベトナム船に救助され無事だった。
現場は中国が設置した石油掘削設備の南南西約31キロ。中国の漁船約40隻がベトナム漁船の活動を妨害した。ベトナム漁業監視部隊によると、中国の漁船は普段から隊列を組んで、ベトナム漁船が石油掘削設備に接近するのを防ごうとしているという。
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ニューヨーク・タイムズが「中国の漁船は中国軍の手先」という記事を掲載(2010/10/5)している。
これによると、中国は南シナ海での海洋権益を広げていく方法として漁船を「海上民兵」にして送り込む手口を多用している。民兵を使うことは「現役の中国軍を使うよりも刺激が少なく、事態をエスカレートさせる可能性が低い」からだ。中国やり方には一つのパターンがあり、まず漁船を送り込む、その後、紛争処理と称して武装した監視船や海軍艦船を送り込むというものである。
2010年の3月、アメリカ軍の音響測定艦「インペッカブル」が、中国当局の船と漁船によって進路妨害を受ける事件が発生した。公海上で海洋調査活動は自由である場所にも関わらず、中国海軍の情報収集艦や漁業監視船、国家海洋調査局の艦艇、2隻のトロール船が妨害活動を仕掛けた。
「インペッカブル」の舳先15メールまで近づいたため、非武装の同船はたまらず消防ホースで放水したが、漁船の船員は「トロール漁船上で尻を向け、下着をズリ下げてみせた」という。上の写真の「蝟集行動」など並みの漁船員が取れる行動ではない。中国漁船は軍当局のもとに組織化され、不断の訓練を受け、万事中国軍の指示を受けて動いているのである。
ベトナム漁船沈没事件は決して対岸の火事ではない。尖閣にも同じような方法で民兵が乗った漁船が押しかけてくると見なければならない。