3大激痛のうち2つも体験した

世に尿管結石、痛風、胆石を「3大激痛」という。胆石に変わって心筋梗塞、腸閉塞、解離性大動脈瘤が入ることがあるが前の2つは不動の地位を占めている。ブログ子は、何の因果かその2つを患ってのたうち回った。

尿管結石は結婚して間もなく横浜・日吉の社宅で発病した。夜中2時頃激痛に襲われ50メートルほど先の内科医院のドアを叩いた。歩くのもままならずドンドン戸を叩くとややあって医者の奥さんが出てきた。痛くて症状を説明することもできない。看護婦を兼ねているようで、察したらしく、先生を呼んできますからと奥に消えた。

医者がペッタンペッタンとスリッパの音を立てながら2階から下りてきたが、これが許せない。「なぜ走ってこない」と怒鳴りたいが声をだすこともできない。ところがその時どこかのおばさんが痛い痛いと駆け込んできた。「胆石のようですね。そちらを先に拝見しましょう」というに至って、「オレが先に戸を叩いたのに」と殺意を抱いたほどである。

こうした結石が尿管を塞いで激痛を引き起こす

こうした結石が尿管を塞いで激痛を引き起こす

夜中駆け込んでくるのは尿管結石か胆石と相場が決まっているとは後で知った。ブスコバンという尿管拡張剤を注射されると針が半分ほど進んだところでケロッと痛みがなくなった。帰りは口笛を吹いて帰ったほどである。

3ヶ月後、また発症した。家を変わっていて今度は新宿のカトリック系病院だった。手術しましょうというので、早くやってくれと願ったが、切るのは痛みが去った2,3日後だという。原稿がたまっていたし、痛みもないのにあほらしいから病院を脱走した。だが2週間後再発して同じ病室に運ばれた。「脱走しない、と一札入れろ」と婦長がやってきた。

右の背中の後ろを盛大に切られて1カ月も入院した。20年後、部下の記者が尿管結石で手術のため入院すると言うので、いろいろ教えようとしたら「今じゃ超音波破砕機があって一晩の入院ですよ」というのであっけにとられた。30年後また発症してその破砕機のおせわになった。簡単とはいっても、結石に照準を当て1分間に100発、都合30分間も連射されたらぐったりとなったが、医学の進歩は早いと実感した。

痛風は新聞社の横浜総局で発症した。痛くてじっとしてられない。昼間いるのは女性ばかりのところで、足の親指が内側に曲がっているのを見て「外反母趾だ」と口をそろえていう。当時は桜木町駅から東横線が出ていたから、片方の靴を脱いで手にぶら下げ靴下のまま他人に踏まれないようにソロリソロリと歩いて、渋谷に出て、高田馬場から出迎えた家内の車で練馬の親戚の医者のところに行った。

痛風の多くは足の親指の付け根が腫れ上がる。文字通り風が吹いても痛い。

痛風の多くは足の親指の付け根が腫れ上がる。文字通り風が吹いても痛い。

「外反母趾のようだ」といったら、従兄が「お前さんハイヒールを履くのかい。これは立派な痛風だ」という。方法は二つある。一つはビールはじめ酒はダメ。肉ダメ、牛乳ダメだ。もう一つはプリン体を抑える薬を飲む方法だ。ただし一生飲み続けなければならない。さてあんたはどっちを取る?ときた。お陰で今現在も薬を飲みつつビールを飲んでいる。

理由はわかっている。この時期ブログ子はホテル業界にちょっとした顔で、発症の5日ほど前、鳥羽国際ホテルに招かれた。伊勢海老、アワビ、うになどの海鮮コースと、松阪牛の刺し身やステーキを中心にした肉料理を総料理長が用意しているという。一泊予定だったので、えいっ両方一度にごちそうになろう、と申し出たのである。もちろん生ビールは飲み放題である。

先週こんな記事を見た。

痛風の予備軍である「高尿酸血症」へのなりやすさは、肥満や飲酒の習慣よりも特定の遺伝子の変異に左右されるとの研究結果を防衛医大などのチームがまとめた。痛風は、尿酸が結晶になって関節にたまることで、激しい痛みを引き起こす。成人男性の4人に1人は、血液中に尿酸が多い高尿酸血症の状態。健康診断を受けた35~70歳の約5千人の血液や体重、飲酒量などのデータを解析したところ、高尿酸血症だった約千人のうち29%は遺伝子の変異が主な原因で、肥満(19%)や大量飲酒(15%)よりも影響が大きかった。

変異があったのは「ABCG2」という遺伝子で、変異があると尿酸を体の外へ出す量が通常より25~75%減る。25%減る変異の場合、身長160センチの人で5キロ、170センチの人で5・7キロ、180センチの人で6・4キロ太るのと同じリスクをもたらすとわかった。飲酒と比べると、ビールを週13リットル飲むのと同程度だった。

遺伝子操作で痛風とおさらばする時代が来るかもしれないのだ。くそ!世の男どもにあの痛さをもっと味わわせてやりたいのに、医学の進歩は早いもんだと無念の思いである。

コメントは受け付けていません。