中国の最高指導部メンバーだった周永康・元共産党政治局常務委員(71)の党籍剥奪と逮捕決定のニュースを見て、ちょうど1年前に北朝鮮のナンバー2だった張成沢が万座の中で連行され銃殺された恐ろしい光景を思い出した。
権力闘争の結果とはいえ、経済から司法に至るまであらゆる権力のトップにいた人物を巨額の収賄、親族による企業の不法経営、国家機密の漏洩、多数の女性との不道徳な関係など多項目にわたる容疑で追い落とすのだから、習近平国家主席にとっても命がけであろう。先に最高指導部入りを狙い失脚した薄煕来・元重慶市党委員会書記は収賄罪などで無期懲役が確定しているが、これと同じかそれ以上の刑は免れない。共産主義国家での「水に落ちた犬は打て」式の寄ってたかっての打擲は毎度のことながら、暴露されたその罪状は相当の「ワル」である。
石油利権で1兆3000億円から数兆円と言われる巨額の蓄財をした男の追及が始まったのは2012年12月6日である。中国共産党の党紀違反を取り締まる中央規律検査委員会のホームページに「李春城・四川省党委員会副書記が重大規律違反容疑で取り調べを受けている」という知らせが掲載されたのがきっかけだった。ブログ子の「中国共産党の腐敗」というファイルにはそれ以来数多くの事例が入っている。
それによると李春城は周永康の側近だった。以来今年7月までに周氏の元部下や親族など300人以上が拘束されたという。こうした大掛かりな摘発のきっかけは習近平の怒りに端を発している。
周永康は2010年11月に重慶市を訪問した際、同市党委書記だった薄煕来と会談した。薄は当時、幼なじみだった習近平が党最高指導者の候補に選ばれたことに大きな不満を抱いており、習氏の能力を否定する発言を繰り返したという。すると周永康も調子づいて盛大に習近平批判を展開した。その会話を、薄氏の側近で同市副市長だった王立軍がひそかに録音していた。追及の手が及んだことを察知した王立軍が2012年2月、四川省成都市にある米国総領事館に亡命しようとした際、その録音を手土産として米国側に渡した。米国を通じて録音内容を知った習近平が激怒したという。
怒ってもそう簡単には手が出せる相手ではなかった。相手は江沢民前国家主席という大物とつながっていたからだ。香港紙などによると、周永康の最初の妻は江氏の親族だが、周氏は2000年ごろ、交通事故と見せかけて殺害した。元テレビキャスターの現在の妻と結婚するためだったとされる。最近、この事実を知った江氏は激怒し、周氏の摘発に同意したという。
北京の国家博物館では、中国の近現代史を紹介する展示室に掲げられた胡錦濤前指導部の集合写真から、さっそく周永康氏の姿が消去された。2007年10月の共産党第17回大会直後に国内外の報道陣との会見で撮影された写真(下)の左端に周永康氏が写っているのだが、現在は消されている。当時9人だった最高指導部メンバーは8人に“減少”した。失脚した指導者らを写真や映像から消去するのは北朝鮮など社会主義国家の常とう手段だが、早くも抹殺が始まっている。周永康事件発生と同じ日に中国人民解放軍信息工程大学で副政治委員、紀律検査委員会書記を務める57)が、収賄容疑で軍の検察部門に連行されたと報じられた。数少ない女性将官だったが、 国際人権団体から「法輪功学習者から臓器を強制摘出している」と告発されていた。「15棟に及ぶ職員宿舎、全国の病院で最大規模となる駐車場、幹部向けの医療センター、救命センターの改修と増築」など複数の大型建設プロジェクトを完成させた功で昇進した。巨額の工事費を捻出するため、非人道的な手段で臓器を摘出・移植した可能性が高い。
先にカナダのハーパー首相と会談した習近平国家主席は「中国は反腐敗闘争を一層強化している」と述べ、国外に逃亡した汚職公務員の捜査での協力を要請、ハーパー氏は応じる考えを表明した。
中国では、公務員が汚職でつくった資産をカナダなどに持ち逃げする事件が相次いでいる。1992年以降、国外逃亡した幹部の公務員は少なくとも2万人を超え、国外流出した資産は1兆元(約19兆円)以上との報道もある。脱出できなかった将軍2人や高級官僚の自殺が相次いで報道されてもいる。
ブログ子は万里の長城を見物した時大渋滞で4時間ほどかかった。これに懲りて、一緒にいた中国通の男が止まっていたパトカーの警官に3000円ほど渡したら、北京のホテルまでサイレンを鳴らしながら40分で送り届けてくれた。便乗してタダで後についたクルマが4,5台いたものだ。
巨魁から公僕の下に至るまで中国の汚職まみれは末期的症状を見せている。それはそうだろう、国自体が、共産主義と資本主義という相容れないものを「一国二制度」として受け入れたのである。資本主義のおかげで経済は急発展したものの、制度としてはもはや破綻している共産党独裁を続けているというこの「矛盾」は長続きするわけがない。