笑えた 北朝鮮が朝日新聞を「御用保守論客」だと

米朝会談に隠れて大きく報道されなかったが、北朝鮮メディアが朝日新聞ソウル支局長を「御用保守論客」と断じ、猛烈に非難したのには笑った。なぜなら、これは毎度、産経新聞を非難するときの常套句だったからである。日本ではオイオイ正気かよ、と言われる罵詈雑言の寄って来たるところは――。

朝日新聞は5月、経済改革の停滞へのもどかしさから、金正恩朝鮮労働党委員長が涙を流す映像が上映されたと報道していた。党機関紙の労働新聞は9日付の論評で、「日本の『朝日新聞』が、われわれの最高尊厳を冒涜し共和国の現実を悪辣にこき下ろす謀略記事を掲載した」と主張。「許し難い犯罪行為の張本人」として、牧野愛博ソウル支局長の名前を挙げた。

論評はさらに、「牧野と『朝日新聞』の妄動は、『日本疎外』で不安になりいらだつ安倍一味のそそのかしの下で行われる敵対行為の一環」として、記事が安倍晋三政権の意向を受けているとの見解を披露。8日付の朝鮮中央通信の論評では「半島の民族的和解と情勢緩和の雰囲気を阻もうとする断末魔のあがき」とも表現した。

朝日新聞社広報部は「批判は当たらないと考えています」としている。当たり前なのだが、朝日の朝鮮半島報道をめぐっては、韓国大統領府も5月、政府の対北対応について事実と異なる内容を報じたとして、朝日新聞を無期限の出入り禁止処分にしている。

笑ったのは日ごろこうした処置を取っているのは産経新聞に対してだからである。韓国は産経への非難、取材拒否、前支局長への告訴(無罪判決)と出国禁止措置など同紙のやることなすこと頭にくるらしい。北も朝鮮総連は産経の電話すら拒否して口汚くののしり、「御用新聞」というのが常だった。朝鮮半島では北も南も常識をどこかに置き忘れているのだが、それが今度はそっくり朝日新聞に向けられている。

朝日新聞は5月30日付朝刊の1面トップで、北朝鮮国内で4月、金正恩氏が海辺で泣く場面を収めた記録映像が上映されたとする記事を掲載した。日本なら血も涙もある、と評価されるところだろうが、あちらでは尊厳をないがしろにしたとなるらしい。首領が泣くことはないといいたいのだろうが。

南北朝鮮のメディア批判は真っ当な報道への勲章と思えばよい。

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