2024年の「今年の漢字」は「金」に決まった。12日午後、ブログ子はちょうどテレビ中継を見ていたが世界遺産・清水寺ので森清範貫主が 「金」の一字を揮毫していたが、草書の崩し字だったので部首の「(ひとがしら)」の右側がなかったので何という字かわからなかった。

案の定、「ちょっとピンと来ない」と拍子抜けする人が多かったという。この行事は、公益財団法人「日本漢字能力検定協会」が毎年公募しており、今年で30回目。応募総数22万1971票の中で「金」が最多の1万2148票(5・47%)だった。パリ五輪での日本選手の活躍を受けてのことだようだが、たった5%ほどで今年の漢字が「金」か、と違和感を持たれても仕方がない。何より、2000年以降「金」が今年の漢字に選ばれたのは5度目である。どこが「今年の漢字」か、と言いたくもなる。
話は変わるが、ブログ子は新聞社時代「長いレンジで物事を観察できる記者」を大事にしてきた。事件・事故から政局にいたるまで、今目の前で起きていることを追いかける記者はいくらでもいる。社会変化の観察者としての新聞記者にはもう一つ、年単位、10年単位で変化している事象に目を向ける記者が必要だと思っている。
新宿の何でもない一軒の家から10年間定点観測した写真で町の景色の変化を追ったカメラマンや、現在でも使えそうだが、「遺憾」を多用する政治家の過去の事例を丹念に拾い上げて「虚言」と同異義語であることを暴いた記者には部長賞や局長賞をどんどん出した。
その「長いレンジで物事を観察」した場合、上述の「今年の漢字」ばかりでなく、もはや有名無実化している歳末風物詩の如何に多いことか。
【芥川賞・直木賞】
歳末恒例の芥川賞・直木賞の候補作が12日発表された、芥川賞5作品、直木賞5作品の候補者を見ても一人として知らない。以前は(といっても平成以前だが)文芸担当デスクにそれぞれ上位ランクの3作品ずつを取り寄せて読んでいたものだ。今回数年前までさかのぼって受賞者を見たがみなそれきり「消えた」作者ばかりだ。
芥川賞の選考基準に「新しい文体をつくった」というものがある。選考委員に谷崎潤一郎とか伊藤整とかいずれも「文章読本」を書いている作家がいて、なるほどと思わせたものだが、今は選考委員自体がどこがいいのかわからないのがほとんどだ。
文藝春秋の営業政策が露骨に出ていて、女性とかお笑い出身とか話題作りが見え見えで面白くない。何より年2回も選考会はいらない。
【ボジョレーヌーボー】
毎年11月になると繰り広げられるボジョレーヌーボーについては、以前このブログで書いた。ワインとは言えない即成熟成法で作り、フランスでは一本300円ほどの安酒を日本で3000円以上で売る商法を指弾した。コロナと不作で2022年は、一番入れ込んでいるサントリーは輸入量を約6割減にした。以後毎年右肩下がりで輸入減が続いている。
【新語・流行語大賞】
今年話題になった言葉を発表する「現代用語の基礎知識選 2024ユーキャン新語・流行語大賞」が12月2日発表され、年間大賞に「ふてほど」が選ばれた。「ふてほど」とは、俳優の阿部サダヲ主演のTBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」の略だという。ブログ子は当然何のことかわからなかった。しかし、”通”の方々にとってもあまりなじみがなかったらしく、SNSを中心に疑問の声が多数あげられた。
大手自動車メーカーの認証不正、パーティー券収入の収支報告書不記載など、2024年は政財界とも不適切事案が目白押しであったが、TBSに忖度したのかどうか、選定理由がもう一つわからない。そういえば、昨年何が選ばれたか誰も覚えていなかろうから、これも、もうお役御免のイベントだ。
【レコード大賞】
大みそかのビッグイベントとして『日本レコード大賞』がある。略称は「レコ大」(レコたい)。主催は公益社団法人日本作曲家協会、後援はTBSだ。
ブログ子は新聞社の編集幹部として少なからず関与していたことがある。この賞はスポーツ紙を含む各新聞社の記者が中心となって決定する。我が新聞社ではスポーツ紙、夕刊紙などがあって合わせて4,5票持っていた。一方、系列のラジオ局や音楽出版関係企業などがいくつもあったから、季節になると「これこれの曲をなんとか」という依頼で席が温まる暇もないくらいだった。
1970年代から1980年代にかけて、テレビにおける歌番組の隆盛と共に最盛期を迎えた。しかし、上で白状したようにレコード会社や事務所の力関係により受賞者が決まっているという指摘が公然と起こり非難が多く寄せられ始めた。1990年代になると受賞そのものを辞退する有力アーティスト(福山雅治、ジャニーズ事務所所属歌手)が増えるようになり、賞の権威は大きく低下した。
ここ3,4年の受賞曲を娘や孫にぶつけても「ああ、あれね、私は韓流ポップ」と反応はにぶい。
【紅白歌合戦】
とどめはやっぱりこれだろう。ブログ子はここ5,6年まったく紅白を見なくなった。7時のニュースをみたあと何と読むのかわからない今風の女の子が出てくるとベッドに入ることが多い。
検索で今年の出場歌手と言うのを見たが、知っているのは石川さゆり、郷ひろみ、福山雅治、天童よしみ、坂本冬美の5人だけであとはチンプンカンプンだ。
子供の頃、白黒テレビの前に家族全員が座り、みかんを食べながらテレビに見入ったものだが、現在は娘も孫もスマホをいじっている。
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要するにすべての歳末の風物詩がなくなったのだ。年末、大みそかに家族全員がそろってテレビの前に座り(主婦だけはおせち料理づくりで台所からちょくちょく見る程度だが)、みかんを食べながら一年を締めくくっていた、あの光景が姿を消した。
どこのメディアでもいいが、「長いレンジで物事を観察できる記者」がいれば、2024年の今こそ、文化史的に大きな曲がり角だったことを証明してもらいたいものだ。