医道 地に堕つ

東京美容外科の黒田あいみ・医師がSNSに投稿したろくでもない内容を見た。医師という職業に要求される最低限の倫理観も持ち合わせていない「外道」である。

この人は東京美容外科・沖縄院院長を務める医師だ。トライアスロンでの日本代表経験もあるとかで、「アスリート医師」として書籍も発売している。波紋を広げているのは、彼女が12月2日に公開したブログだ。「いざ解剖研修@グアム!→打ち上げ☆」とのタイトルで、グアムでの解剖研修に際し、解剖の様子を撮影した写真などを公開していた。

そのなかで「今回は fresh cadaver (新鮮な遺体)で勉強をしにきていて」とし、解剖の様子を複数の写真を交えて伝えた。解剖が行われている様子を背景に、複数の医師らで並んだ記念撮影では、笑顔でピースをしている。

 中には、「頭部がたくさん並んでるよ」として、献体の頭部がずらりと並んだ写真に絵文字付きのコメントをつけた投稿もあった。解剖中の献体の頭部の画像もあり、おおむねモザイク加工がされていたものの、一部は加工が外れたまま公開されているものもあった。

 一連の投稿にはランチに食べたというピザやサンドイッチの写真も並び、「いや~~~朝から晩までの解剖は本当に疲れました」「もうぐったりでした」などと絵文字混じりにつづっていた。

これに対し同じく美容クリニックを開業する高須克弥院長(79)がX(旧ツイッター)で「南無阿弥陀仏。 馬鹿医者め! クズ」「馬鹿医者ども(怒)」「怒」などと記述。さらに「僕の時代の医学部解剖実習での作法は、献体してくださった方に黙祷のあとお顔をしっかりと観察して記憶することでした」と書き、この女性医師を非難した。

ホリエモンこと堀江貴文も、「これは本当にひどくて、SNS慣れしてないって(本人が言っている)のも嘘でめちゃくちゃこれまでも似非科学な発信している。一般レベルでも明らかにやっちゃダメなことを晒してしまった。ほんと医師免許返上するのをお勧めするレベル」と断罪している。まったく同感である。

学生時代医学部にいる友人の下宿を訪ねた折、机の上に広げた油紙の上で肘から先を切断した腕にメスを入れて解剖している姿に仰天したことがある。「神経の細部を切開して観察している」という。献体をそんな私物扱いしていいのかどうか、きっと今でもダメなのだと思うが、神経と言うのは針金のように細いと思っていたが、うどんほどの太さであることをその時知った。

ブログ子の新聞記者時代の同僚で遺言で東京女子医大に献体した人物がいる。今回の問題を起こした女医が出た医科大である。2年先輩ながら久しく同期生のように親しくしていた。彼は女好きだったので、故にほかの医大への献体でなく女子医大にしたのかと冷やかされたものである。1年後、遺体は返されてきたが、きれいに縫合されていたという。

人は見かけによらないものだと、感心して自分も献体の遺言でも残そうかと思っていたが、この女医のように、解剖台の前で「イエーイ!」と記念写真撮られるのはまっぴらごめんだと断念した。

ブログ子は今日年賀状を書き終えて投函したが、宛名に医者が多い。全体の1割強になる。叔父が娘4人すべて医師に嫁がせたのと、その子弟がほぼ全員(6人)勤務医か開業医になっているためである。概ねまともだが、フェラーリだかのスポーツカーを乗り回しているのが1人、「患者のほとんどは治らないけど、リハビリなどで儲けが見込める」とお台場で整形外科医院を開業している「医は算術」系が1人、いる。気に食わないのでここ数年会いもしていないで賀状だけだ。

偏見を承知で言うのだが、今回の女医のような美容整形医は「医者であって医者でない」と思っている。「医者の一段下、美容師の一段上」くらいである。

医者と言うのは人の命と相対(あいたい)する聖職である。しかるに美容整形なる分野は命とは向き合わない。JRの車両広告で見ると、美容整形分野と言うのは瞼を二重にしたり、脱毛したり、シリコンを鼻や乳房に入れる「見栄えをよくするだけ」の医業である。美容整形の先陣を切る韓国人の女性を見るとどれもみな同じ顔をしている。あんなものが医学とはおこがましい、と思う。

ところが、その美容整形医にまっしぐらに走る医学生が激増しているという。医師免許を得てから研修医を終えて各専門に進むのだが、内科、外科・・・見向きもせずまっすぐ美容整形医に進む者が増えているという。これを「直美(ちょくび)」というそうだ。

理由は報酬だ。医師のなり立ては年収800万円くらいだが、美容整形医は初めから2000万円くらいもらえるという。

厚生労働省によると、美容外科に従事する医師は2012年には444人だったが、22年には1247人と2.8倍に増加。20~30代が約半数を占める。一方、外科は同じ期間に2万8055人から2万7634人へと微減した。

 美容外科の診療所も急増している。同省によると、23年10月時点で美容外科を掲げる診療所数は2016施設で、20年10月時点の1404施設から約4割増えた。増加率は43診療科目の中で最も高かった。一方、小児科は1020施設(5.4%)、外科は632施設(5.1%)減った。

 背景には、最近の若手がワーク・ライフ・バランスを重視し、激務を避ける傾向がある。美容医療を手掛けるクリニックは1年目から年収2000万円を得られるケースもある。美容医療は残業も少ないとされる。厚労省の若手医師への調査では、外科を選択しなかった理由として「ワーク・ライフ・バランスの確保が困難」とした割合が最も高かった。

なんと「志」の低いことか。ブログ子の時代新聞記者の初任給は「2万2000円」だった。他と比べても高いものではなかったが、金額のことなど歯牙にもかけないのが普通だった。

医道、地に堕つ。

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