北朝鮮潜水艦のオンボロ度

北朝鮮国営の朝鮮中央放送は16日午前6時の定時ニュースのトップで金正恩第1書記が朝鮮人民軍海軍第167軍部隊を視察したと伝え、その模様を伝える写真を配信した。大将の前線視察で士気を鼓舞する狙いだが、同時に北朝鮮の潜水艦部隊が置かれているお粗末な現状を世界に暴露することにもなった。

少し前のこのブログ「日中もし戦わば」で日本の潜水艦隊育ての父と言われる海将から軍事知識を教えられたことを紹介した。昔なら連合艦隊司令長官にあたる横須賀艦隊指令や防衛庁の防衛課長を務めた方である。以来日本が圧倒的能力を持ち続けている潜水艦の建造能力や乗組員の優れた聴力による索敵能力の高さは理解している。

そこで金正恩第1書記が視察したという写真を見ると、これは珍しいロメオ型潜水艦である。旧ソ連で作られその後中国でも100隻建造された主力潜水艦だがいまではすべて退役している代物だ。北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1995年までに24隻を国内で建造したとされる。

北朝鮮のおんぼろロメオ級潜水艦

北朝鮮のおんぼろロメオ級潜水艦。今では北朝鮮とエジプトにしかない。


捨て去られた理由はまず騒音の大きいディーゼルエンジンで航走するのですぐ策敵されてしまう。いざ会敵の際は急速潜航して待ち伏せ攻撃を行なうのだが、潜航能力は低く潜航時の航続距離はせいぜい10~20海里、最大潜航可能時間は約半日程度であり、ソナーから逃れても空気補充時にレーダーで必ず探知されてしまう。

先日オーストラリア海軍が日本の「そうりゅう」型潜水艦を導入したがっていることを紹介したが、「そうりゅう」はステルス性能を持ち、その上2週間潜行したままである。現代ではロメオ型潜水艦は世界のどこの船とも対抗できないレベルなのである。ものの本には、潜水艦というより「可潜艦」と揶揄されているほどだ。

この日の視察では軍港の近くを一周りして帰港したようだが、遠出しなかったのは中国に止められて深刻と伝えられる燃料不足のせいか。潜水もしなかった(艦上は乾いて潜水の形跡がない)ようだが、これなど1985年2月に潜行したまま1隻が浮上しなかった事故の二の舞いを恐れたか。

Z20140616TTREU02196G3000000艦内の写真では潜望鏡をみる金正恩第一書記というのも公開されているが、光学式の恐ろしく時代物である。何よりハッチに上がってあたりを睥睨する写真では、ハッチの周りが錆びだらけである。大将が乗るからには一番いい船を出したのだろうが、それがこの程度では乗員の保守能力の程度もわかるというものだ。

海幕ではとっくにそのくらいは把握しているだろうが、ブログ子の浅学非才の軍事知識を持ってしてもやれやれ安心だわい、日朝政府間協議が1年4カ月ぶりに再開する見通しだが、拉致問題以外でも日本側はもっと強気で交渉するべきだと思った次第。

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