コメ価格の上昇が止まらない。総務省が18日発表した3月の全国消費者物価指数(2020年=100)で、コメ類が前年同月に比べて92・1%上昇し、比較可能な1971年以降で最大の上昇率となった。
農林水産省は3月に備蓄米の入札を2回実施して計21万トンを順次放出して一部が店頭に並び始めているが、店頭価格は上昇が続いている。農水省は今月3回目の入札を行い、10万トンを追加放出するほか、7月頃まで毎月放出する方針だが、これで価格が下がるかというと眉唾ものである。

このような米価高騰を招いた原因はどこにあるか。ブログ子の見るところ、農水省、自民党農林族、農協、農水相による三位一体、どころか四者による共同正犯である。
もちろん一番は農水省である。昨年の夏以降、農水省は新米(24年産米)が供給されるようになると米価は下がると言ってきた。しかし、逆に米価は高騰した。これは23年産米が猛暑等によって供給が40万トンほど減少し、この分を本来24年10月から消費するはずの24年産米から先食いしたからである。
年間の供給が40万トン不足していれば、価格が上がるに決まっている。残念ながら、農水省はこの基本的な経済学を理解してなかった。
そのうえ今や意味を成していない「減反」にこだわりつづけてきた。米作りを続ける方に助成金を出すならまだしも、耕作地を放り出す、いわば生産放棄の農家に巨額の金をばらまいてきた。減反政策は1970年(昭和45年)に開始され、主食用米の過剰生産を抑制するため、農家が水田での米作りをやめ、代わりに麦や大豆、飼料用米などへの転作を行うことで、政府から補助金や交付金が支払われる仕組みだが、これまで支払った助成金の総額は、約8兆円に上る。
農水省は価格高騰の原因を「転売ヤー」や「流通の目詰まり」といった末節になすりつけ、自らの政策失敗から国民の目を逸らそうとしている。原因はそんなことでないのは、多くの農政学者も指摘している。
次は農協である。初回の入札は15万トンだったが、農協(JA)が94%を落札した。 この入札方式は「最も高い価格を提示した業者から順に落札する仕組み」である。米価を高どまりさせたい思惑がある農協が備蓄米のほとんどを買い占めたわけだ。
法律で買い戻し権利があることはわかっているが、まずもって競売から農協を外せば米価は下がっていたであろう。実に無策であった。
実際、卸業者などに渡ったのは放出分の1%ほどにすぎないという。これでは市場に出回らないのは当たり前で、農協が買い取った分をスタッグ(保留)しているのではないかとみられても仕方ない。もちろん、2024年は猛暑や台風などにより、米の収穫量が減少したことや、農業資材の価格上昇、投機的な買い占めがあったことなど、ほかの要素もあったのだろうが、米価を「高止まり」させたいという農水省と農協の思惑が一致してのことに違いない。
これまでもJA農協はコメの値段を操作してきた。豊作で米価が下がりそうなのに、在庫操作によって、逆に上がったときもあった。2011年まで公正なコメ取引のセンター(「全国米穀取引・価格形成センター」)が存在した。しかし、卸売業者と直接交渉(相対取引という)して値決めした方が有利だと判断したJA農協は、このセンターへの出荷を拒否して潰した。
戦前まで大阪堂島にコメ先物市場があった。先物取引は、農家にとって経営を安定させるリスクヘッジの機能を果たす。戦後その役目を担った食糧管理法が1995年に廃止されて以降、先物取引の申請が商品取引所から度々行われたが、コメ価格の操作が困難となると判断したJA農協の反対により潰されてきた。
価格安定に役立つもろもろの仕組みをJA農協は独占的地位を利用してことごとく葬ってきたツケが現在の米価高騰に現れているのだ。
農水省と農協の無策、暗愚、怠慢が米価高騰の要因だが、これに拍車をかけているのが自民党農林族である。米価高騰の原因がどこにあるか知っているのに、農水省と農協に追従するばかりで、問題解決に乗り出したという話を聞かない。

江藤拓農林水産相もお粗末である。備蓄米放出で「これで自然に価格は安定する」と大見えを切ったが、結果は上述の通り。まだある。衆院予算委員会分科会で食糧法に従って早く放出をすべきだったとする野党議員が質問したのに対し、「食糧法にはそんなこと書いてありません。書いてありません。」と自信満々に答弁した。江藤氏の後ろにいた官僚が慌てて声を掛けて指摘してやっと「大変失礼しました。書いてありました」と訂正するドジ。要するに不勉強な大臣なのだ。
政府、農水省はしばしば「日本のコメ関税は極めて高く、外国産米の流入を鉄壁に防いでいる」と説明してきた。「100円の外国産米は関税で877円になる」と説明がなされ、「778%」という数字が独り歩きしてきた。この欺瞞を2013年11月15日の日経新聞が指摘されると、あっさりと「280%」に修正して知らんぷりだ。
都合よい数字を作り出しては国民にウソの説明を繰り返して「日本の米食文化を守る」「食料自給率の向上」と空虚な説明をしてきた農水省と無能な経営で自分のところの組織も破綻してきた農協の罪は大きい。
現在、ごはん1膳(約57円)は6枚切り食パン1枚(約32円)や4枚切り食パン1枚(約48円)より明らかに割高である。かつて安価な国民食であったはずの米が、パンやパスタより高価になる。これが、自民党と農水省による長年の失政がもたらした惨状である。
どうすればよいかは、上記で一目瞭然だ。まず農水省の解体的出直し、無能な農協にも引導を渡す。農水大臣も自民党の農林族もいらない。幸いいまだに米作りへの農家の熱意は衰えていないから、減反などと言う馬鹿はやめて、田んぼの集約と労力の機械化に助成金を出し、米の生産量を海外に輸出できるまで高める。これに尽きる。