ロシアにはアネクドート(анекдо́тと呼ばれる、政治小話の伝統がある。ロシア語では滑稽な小話全般を指す。権力を嘲笑し、生活の不満を皮肉るアネクドートは、ロシア人には必須のものだ。5月に「アネクドート①」を書いたので、「その②」を以下に。
【罰金3万ルーブル】
今年3月、リャザン州の男性が大統領とショイグ国防相を皮肉るこんなアネクドートをSNSに投稿した。
昨年11月、ロシア軍がウクライナ南部のヘルソン市から撤退すると、プーチン大統領がショイグ国防相を叱責した。
「なぜヘルソンから撤退するのだ」
「ネオナチからウクライナを解放せよとのあなたの命令に従ったのですが……」
ロシア軍をナチス・ドイツになぞらえたユニークな作品だったが、この男性は後に地元の裁判所から3万ルーブル(約5万円)の罰金刑を言い渡された。軍の名誉を失墜させる行為には最高15年の刑を科すとする、侵攻後に採択された改正刑法に抵触したとされた。アネクドートも今では笑えぬ冗談と化した。
それでも民衆はせっせとアネクドートを披露している。
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プーチン大統領が軍需工場を視察した。工場長が説明した。
「前線の兵士に必要な物資を届けるため、毎日休みなしにフル稼働しています」
「それで何を作っているのか」
「棺桶です」
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大義名分のない戦争に駆り出されているロシア兵の士気は低く、兵器や銃弾も不足し今や北朝鮮頼みだ。
で、こんな作品が…
プーチン大統領の国民とのテレビ対話で、シングルマザーが質問に立った。
「私には2人の息子がいます。子育てで国に何を期待すればいいでしょう」
「2通の召集令状だ」
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父親が、軍に動員された息子に電話した。
「キエフは確保したのか」
「まだです」
「ハリコフは?」
「まだです」
「では、ウクライナで何を確保したのだ」
「テレビ、冷蔵庫、高級ワイン、パソコン、靴下、下着……」
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KGB(ソ連国家保安委員会)の将校だったプーチンは、ソ連に思い入れがあると見られがちだが、実際にはソ連指導者を酷評し、18世紀の帝政ロシア皇帝、ピョートル大帝やエカテリーナ女帝を称賛している。
プーチンは、「レーニンはロシア人の住む地にウクライナ共和国という人工国家を作った」「スターリンはドイツから奪った領土をウクライナに与えた」「フルシチョフはロシア固有のクリミアをウクライナに帰属させた」などと歴代ソ連指導者を非難している。
そしてツァーリ(皇帝)をしきりに称賛する。特にトルコとの戦争でウクライナ南東部やクリミアを奪ったエカテリーナ女帝を称え、「ピョートル大帝より効果的な君主だった。女帝の時代にロシアは領土を拡大した」と評価した。国民対話で、「今読んでいる本は、エカテリーナ女帝時代の歴史書だ」と明かしたこともある。
それを皮肉ったのがこんなジョークだ。
問=ピョートル大帝とプーチン大統領の共通点は何か?
答=ともにロシアを19世紀に導こうとしている。
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ロシアは西側諸国の厳しい対露経済制裁にあえいでいる。
米国の対露経済制裁に伴い、マクドナルドなどのファストフード、コカ・コーラ、ペプシコーラ、アップルやフェイスブック、ツイッターがロシアから撤退した。そこである医師がコメントした。
「ロシア人はこれで、心身ともに健康になれる」
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プーチン政権は国民を西側の情報から遮断するため、インターネットやNetflixを統制した。
新しいサービスは、「インターニエット」、「Nyetflix」と呼ばれる。
(ロシア語で「ニエット」は「ノー」を意味する。)
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戦争が長期化するにつれ、ロシアの国力は弱体化しつつある。漁夫の利を狙っているのが中国だ。西側からの経済制裁にあえぐロシアの資源を買い支え、着実に影響力を増している。いずれロシアは中国に飲み込まれるかもしれない。そんな不安は国民にも浸透している。
100年前のロシア指導者はラスプーチン。
現在のロシア指導者はプーチン。
100年後の指導者は陳(チン)。
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22世紀、強力な新型コロナウイルスがまた世界を襲った。
アメリカでは、米大統領が国民に自宅待機を訴えた。
フランスでは、EU大統領が国民に自宅待機を訴えた。
旧ロシアでは、中国共産党総書記が国民に自宅待機を訴えた。
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モスクワの街角で、一人の男が叫んだ。
「大統領の大馬鹿野郎!」
すると、すぐさま警察官が駆けつけてきて、男は逮捕されてしまった。男が言った。
「俺が何をしたって言うんだ!」
「プーチン大統領への侮辱は許されない!」
男は笑って言った。
「おいおい、俺はゼレンスキーのことを言ったんだぜ?なぜそんな勘違いを?」
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問い:プーチンがクレムリンのパソコンをすべてMacに変えるよう命じた。なぜ?
答え:Windows(窓)に近づくのが怖いため。
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長引くウクライナ戦争の中、一人の将軍がプーチンに呼ばれ、クレムリン内の大統領執務室に入った。執務室ではプーチンが椅子に座り、テーブルに目を落とし、涙を流していた。
将軍が驚いて聞いた。
「どうされたのですか、大統領閣下!」
プーチンが答えた。
「朝からこのジグソーパズルに取り組んでいるのだが、ちょっと難しくてね。どうしてもうまくいかないんだ」
将軍が言った。
「閣下、少しお疲れなのでしょう。疲労が溜まれば、認識や判断が鈍ることなど、誰でもありますよ。大丈夫、ちょっと休めばすべてうまくいきます」
プーチンは少し微笑み、一つ頷いて言った。
「そうだな。わかった。良い助言をありがとう。少し休むことにしよう」
将軍が言った。
「わかっていただき光栄です。それではまず、そのコーンフレークを箱に戻しましょうか」
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プーチンが死んで、ついに地獄へと落ちた。
地獄の悪魔が、プーチンにこう言った。
「地獄に落ちた者は、まず私と勝負することになっている。勝負の方法はそちらが決めていい。殴り合いの喧嘩でも、拳銃の早撃ちでも、トランプのポーカーでも。ロシアンルーレットだって、あるいは君の得意な柔道だって構わない」
悪魔が笑いながら続けた。
「しかし、これまでに誰一人、私に勝った者はいない。もしも勝てば天国行きだ。さあ、勝負方法を決めな」
そう言った悪魔が、急に神妙な顔つきに転じて続けた。
「ただし、選挙はダメだ。選挙だけはな」
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プーチンが声高に言った。
「我が国では、投票の自由が完全に保障されている」
新聞記者が聞いた。
「投票後の自由は保障されているでしょうか?」
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ロシアで大統領選挙が行われ、プーチンが得票率82%で当選した。
今後の数週間で、人口が18%ほど減少するだろう。