家庭向けの「食卓塩」と「クッキングソルト」の価格が、4月1日の出 荷分から約3割引き上げられる。販売する公益財団法人の塩事業センターによると、赤いキャップで知られ る食卓塩100グラム入りは、税込み 73円から98円に、クッキングソルト800グラム入りは146円から198円になる。メキシコから原料として輸入している塩の調達費や商品の包装材の価格が上がっているためで、値上げは1992年以来、24年据え置いてきたのでなにとぞご理解を、と言っている。
このニュースで思い出したのだが、「日本の塩では漬物は漬けられない」と言い出したのは、長らくNHKの「きょうの料理」に出演していた酒井佐和子が最初である。今でも「テレビ料理人列伝」に数え上げられ、漬物や山菜の本などを多数出した。ブログ子はその言を確かめるべく日本専売公社へ取材に出かけたことがある。
日本専売公社はタバコと塩の専売を目的に昭和24年に大蔵省の外局として発足した特殊法人でキャリア官僚が牛耳っていた。広報部に通されて「99,99%塩化ナトリュウムの塩で、味に変わりはない。漬物も大丈夫だ」と言い張った。その日本専売公社は1985年(昭和60年)に日本たばこ産業株式会社 (JT) となり、1996年に独立して現在の「公益財団法人 塩事業センター」となりJTと同じビルに入っている。そのホームページを見ると現在でも上と同じ強弁を繰り返している。
しかし明らかに、塩事業センターの塩では漬物はもちろん梅干しも、みそも、しょうゆも出来栄えは明らかに違うことは、世間の人は皆知っている。今では塩は自由化になり我が家でも家人は梅干しを作るに絶対に食卓塩などの精製塩は使わない。化学的には完全な塩化ナトリュウムであっても、にがりやその他ミネラル分がない「塩であって塩でない」ものだからである。
昭和47年4月以降、従来の水分を蒸発・除去する方法から、海水中の塩分を集める「イオン膜」が導入され、全面的にこの方式に切り換えられたが、この方法でつくった塩ではおいしい漬物も梅干しもできないのである。
塩事業センターが30%も値上げしても何ら影響はない。すでに世界各国の、いろんな製法の塩が出回っていて我が家の食卓からはあの赤いキャップの精製塩はとっくに姿を消してスイスの岩塩が幅を利かせている。塩事業センターの大きな役目は非常時のために塩を全国で50万トン備蓄することだそうだ。神戸の大震災で役立ったと自慢するがこのとき使ったのは14トンである。はっきり言ってもう不要な役所である。